「みんなでお散歩会」
朝 準備のわくわく
まだ冷たい空気の残る朝。
病院の前では、美咲が手袋をはめながら張り切った声を上げた。
「先生、準備できました!今日は待ちに待ったお散歩会ですよ!」
近所の公園まで、みんなで一緒に歩いて往復する小さなイベント。
「犬同士の社会化にもなるし、飼い主さんの交流にもいいですよね」と美咲が言い出し、病院で初めて企画したものだった。
私はリードや水入れなどの備品を確認しながら「安全第一でいこうな」と返した。
午前 集合
開始時間になると、続々と飼い主さんと犬たちが集まってきた。
ベルと女の子は元気いっぱい。
「今日はリーダーになるんだ!」と女の子がはしゃぐと、ベルもしっぽをぶんぶん振って応える。
リクと加藤さんは、ゆったりしたペースでやってきた。
「若い子たちにはついていけないかもしれないが、散歩仲間ができるのは嬉しいね」と加藤さんが笑った。
チャイとモカは夫婦と一緒に。
チャイはすでにテンションMAXで駆け回ろうとし、モカは冷静に群れを観察していた。
ユキは飼い主の女性と並んで静かに到着。
真っ白な毛並みが冬の空気によく映えて、みんなの目を引いていた。
出発 にぎやかな行進
「それじゃあ、出発しましょう!」
美咲の掛け声で、一行は病院を出発した。
歩道を列になって歩くと、道行く人たちが振り返り「かわいい!」と笑顔を見せる。
犬たちはそれぞれのペースで歩き、飼い主たちは自然と隣同士で会話を始めていた。
「散歩のコツはありますか?」
「靴底に滑り止めをつけると安心ですよ」
「うちはハーネス派なんです」
会話の輪が広がり、犬たちも匂いを嗅ぎ合って楽しそうだった。
公園でのひととき
公園に着くと、犬たちは少しリードを緩めてもらい、それぞれ遊び始めた。
ベルは女の子とボール遊び。
リクはベンチのそばで加藤さんと日向ぼっこ。
チャイは他の犬たちに元気よく飛びかかり、モカはそんな様子を見守る役。
ユキは静かに雪の上を歩き、足跡を並べていた。
「こうしてみんなで集まると、犬たちも表情が違いますね」
美咲が嬉しそうに写真を撮っていた。
帰り道 つながる会話
帰り道は、行きよりもさらににぎやかだった。
「またやりたいですね」
「次は春にお花見散歩なんてどうですか?」
そんな会話が飛び交い、飼い主同士の距離がぐっと縮まっていた。
犬たちも満足そうに歩き、時折後ろを振り返って仲間の姿を確かめていた。
夕方 病院に戻って
病院に戻ると、みんなで「お疲れさまでした」と自然に拍手。
犬たちは水を飲み、飼い主たちは温かいお茶を飲みながら余韻に浸った。
「病院って診察だけじゃなくて、こういう交流の場にもなるんですね」
誰かがそう言い、美咲が少し照れくさそうに笑った。
夜 余韻の中で
全員が帰ったあと、静かな病院に戻ると、玄関に残る足跡の列が目に入った。
大きな足跡、小さな足跡、そして飼い主たちの靴の跡。
「みんなで歩いた証拠ですね」
美咲がしみじみとつぶやく。
「また次につながるといいな」
私はそう言って、心の中で次の企画を思い描いていた。




