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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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「クリスマスプレゼントの子犬」

冬の朝


十二月も半ばを過ぎ、街はすっかりクリスマスの雰囲気に包まれていた。

通りにはイルミネーションが灯り、カフェからは甘いシナモンの香りが漂ってくる。


「ひだまり動物クリニック」の扉を開けると、冷たい空気と一緒に小さな鈴の音が鳴った。

待合室の壁には、美咲が飾りつけたクリスマスリースが掛かっている。


「先生、おはようございます!」

美咲は赤いサンタ帽をかぶって笑っていた。

「今日は予約いっぱいです。チャイとモカの定期健診もありますよ」


私は白衣に袖を通しながら微笑んだ。

冬は動物たちも体調を崩しやすい季節だ。

忙しい一日になりそうだが、どこか心が浮き立つのは、やはりクリスマスの魔法のせいかもしれない。


子犬との出会い


午前の診察が一段落したころ、小学生くらいの女の子と両親がキャリーケースを抱えてやってきた。

「こんにちは。あの、この子を診てもらいたくて…」


キャリーから顔を出したのは、生後二か月ほどのラブラドールの子犬だった。

つぶらな瞳でこちらを見つめ、ぴょこんと耳を動かす。

診察台に乗せると、しっぽをブンブン振りながら探検を始めた。


「わあ、かわいい!」

美咲が思わず声を上げる。


「この子、クリスマスに迎えることにしたんです」

母親が嬉しそうに語る。

「娘へのプレゼントでもあり、家族みんなの新しい仲間でもあって」


私は健康チェックを丁寧に行い、ワクチンの説明や食事の注意点を伝えた。

子犬は元気そのもので、体も丈夫そうだ。


「大丈夫、この子はとっても元気です」

そう告げると、女の子の顔がぱっと輝いた。

「やった!名前は“ベル”にするの。クリスマスベルのベル!」


その声に、子犬が「ワン!」と鳴いた。

まるで自分の名前を理解したかのように。


待合室のにぎわい


午後、病院はさらににぎやかになった。

チャイとモカが夫婦に連れられて現れ、診察台の上でじゃれ合う。

「この子たち、本当に仲良しなんですよ」

夫婦の笑顔に、私も思わず頷く。


その少し後には、リクも加藤さんと顔を出した。

ゆっくりとした足取りだが、まだまだ目は生き生きとしている。

「先生、クリスマス用に赤いバンダナを買ってやったんだ」

加藤さんの言葉に、リクは首元のバンダナを誇らしげに揺らした。


そして夕方には、白猫のユキがやって来た。

青い瞳を輝かせ、冬の冷たい空気の中でも元気そうだ。

「先生、今年もユキと一緒にクリスマスを過ごせます」

飼い主の男性の笑顔に、私は心から「よかったですね」と答えた。


待合室にはそれぞれの動物たちが集まり、まるで小さなクリスマスパーティーのような雰囲気が漂っていた。


子犬ベルの帰り道


閉院間際、再び女の子と家族がベルを連れてやって来た。

「先生、お薬の飲ませ方をもう一度教えてください」

母親が少し不安そうに尋ねる。


私は丁寧に説明し、ベルを軽く抱き上げた。

小さな体は温かく、未来への希望でいっぱいだった。


「大丈夫ですよ。ベルちゃんは強い子です。きっとご家族と楽しいクリスマスを過ごせます」


女の子はベルをぎゅっと抱きしめ、目を輝かせて言った。

「先生、ベルと一緒にいっぱい遊んで、来年も病院に来ます!」


その言葉に、私は自然と笑みをこぼした。

診察室の中に、小さな鈴の音が聞こえた気がした。


一日の終わりに


夜。病院を閉め、机の上に積まれたカルテを眺める。

「ベル」「チャイ&モカ」「リク」「ユキ」――それぞれの名前が、今日の温かな時間を思い出させる。


冬は寒い。けれど、動物たちと飼い主の絆は、どんな季節よりも温かい。

クリスマスは人だけでなく、動物たちにとっても幸せを分け合う日なのだ。


私は白衣を脱ぎながら、小さくつぶやいた。

「メリークリスマス、ベル。また会おうね」


窓の外には、静かに舞う雪が街灯に照らされていた。

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