表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
動物病院日誌   作者: じょんどぅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/150

「冬鳥の訪問者たち」

朝 小さな訪問者


一月の澄んだ空気の朝。

病院の庭の柿の木に、数羽の雀がちゅんちゅんと群れていた。

霜を帯びた枝の上で丸くなり、時折羽をふるわせる。


「先生、鳥が来てますよ」

美咲が窓の外を指差した。


「冬は餌を探して大変だからな。庭の実を食べに来るんだろう」


小さな羽音と鳴き声が、冷たい空気の中に温かさを運んでいた。


午前 ベルと雀の追いかけっこ


最初に来たベルは、待合室に入るなり窓際にぴょんと駆け寄った。

外の雀に気づいたのだ。


「わんわん!」と声を上げ、窓ガラス越しにしっぽをぶんぶん振る。

雀たちは驚いて飛び立ち、また別の枝にとまった。


「ベル、届かないのに~」

女の子が笑う。


ベルはそれでも窓に鼻を押し付け、雀の動きを追い続けていた。

待合室の人たちもつられて微笑む。


午前後半 リクとヒヨドリ


次に来たリクと加藤さん。

待合室の外には、灰色のヒヨドリがひと羽、柿の木にとまっていた。


「リク、見てごらん」

加藤さんが窓を指差す。


リクは首をかしげながら目で追い、やがて「ふぅん」というように小さく鼻を鳴らした。

「犬なりに観察してるんでしょうね」

加藤さんが笑うと、待合室の空気が穏やかになった。


昼 チャイとモカ、シジュウカラの歌声


昼頃、チャイとモカがやってきた。

そのとき庭に現れたのは、黒い頭に白い頬のシジュウカラ。

枝にとまり、澄んだ声でさえずっている。


「わあ、かわいい!」

奥さんが声を上げる。


チャイは窓にぴょんと飛びつき、鳴き声に合わせて吠えようとするが、声が出る前にモカが「やめなさい」と言わんばかりにしっぽを振った。


待合室にいた子どもたちが「シジュウカラっていう鳥なんだよ」と得意げに説明する。

小さな自然教室のような時間が流れた。


午後 ユキと静かな観察


午後に来たユキは、窓辺に座り込んでじっと外を眺めた。

その視線の先には、枝にとまるツグミ。


「ユキは追いかけようとはしないんですね」

美咲が不思議そうに言う。


「ただ眺めているのが好きみたいです」

飼い主さんが答える。


ユキの白い毛並みと、冬鳥の落ち着いた色合いが重なり合い、待合室は静かで清らかな雰囲気に包まれた。


夕方 鳥と動物、人と人


夕方になると、待合室は自然と「鳥の話題」で盛り上がった。


「ベルちゃんは雀を追いかけてたね」

「リクくんは観察タイプ」

「チャイくんは歌に参加しそうだった」

「ユキちゃんは哲学者みたいに眺めてた」


笑い声の中、外の木々にはまた雀が戻ってきて、夕暮れの空に溶け込むように鳴いていた。


夜 鳥たちの余韻


診療を終え、庭を見渡すと、もう鳥たちの姿はなかった。

ただ、枝の上に残った小さな羽毛が風に揺れていた。


「先生、鳥たち、また明日も来ますかね」

美咲が問いかける。


「来るさ。冬の間はここが彼らの食卓だからな」


動物たち、人、そして鳥。

小さな病院の庭は、思いがけず多くの命をつなぐ場所になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ