「初日の出を見た朝」
新年二日目の空気
一月三日。
病院の前にはまだ門松があり、待合室には「謹賀新年」の短冊が飾られている。
「先生、おはようございます!」
美咲が元気よく挨拶した。
手には小さな折り鶴がいくつも入った袋。
「お正月っぽい飾りを増やそうと思って」
窓辺に折り鶴を飾ると、待合室がさらに華やいだ。
冬の澄んだ空気の中で、今日はどんな動物たちがやって来るのだろうか。
午前 ベルと初日の出ラン
最初に来たのはベルと女の子。
「先生! 元旦にベルと一緒に初日の出を見に行ったんです!」
女の子の声は弾んでいた。
話を聞けば、公園の小高い丘まで家族で散歩したという。
朝日が昇る瞬間、ベルはしっぽを振って走り回り、光に包まれていたそうだ。
診察台の上でも、ベルは元気いっぱい。
「日の出パワーだな」
そう言うと、女の子は「今年は絶対いい年になります!」と笑った。
午前後半 リクと眠たい顔
次に来たリクは、加藤さんの腕の中で大あくび。
「実はね、元旦の朝に一緒に初日の出を見に行ったんですけど……この子、ほとんど眠ってました」
加藤さんが苦笑する。
診察台に乗せると、リクは目をこすりながら(もちろん仕草だけだが)、まだ夢の中にいるよう。
「寝正月タイプなんだな」
そう言うと、待合室にいた飼い主たちがクスクス笑った。
昼 チャイとモカ、窓辺の朝日
昼頃、ご夫婦と共にチャイとモカがやってきた。
「うちの子たちは外に出るのが苦手だから、窓から一緒に見たんです」
奥さんが話す。
チャイは窓辺でぴょんぴょん跳ねながら赤い光を追いかけ、モカは静かに腰を下ろして、じっと太陽を見つめていたという。
「チャイは朝日をおもちゃと勘違いしてたみたいで」
ご主人が笑うと、待合室も和やかな空気に包まれた。
午後 ユキと海の初日の出
午後、ユキと飼い主さんがやってきた。
「元旦は海まで出かけて、初日の出を一緒に見ました」
水平線からゆっくりと昇る太陽。
ユキは砂浜に座り、風に毛をなびかせながらじっと空を見つめていたそうだ。
「まるで神様を見ているみたいでした」
飼い主さんの言葉に、私は深く頷いた。
白い毛並みと朝日。きっと忘れられない光景だっただろう。
夕方 待合室の語らい
夕方、待合室では自然と「初日の出」の話題で盛り上がった。
「ベルちゃんは走り回ったんだって?」
「リクちゃんは眠かったのね」
「うちは窓から見ただけ」
「ユキちゃんは海! すごい!」
それぞれの初日の出体験が交わされ、笑顔が広がる。
犬や猫たちはそれぞれの居場所でのんびり過ごしながら、飼い主の話に耳を傾けているように見えた。
「新しい年の朝日って、やっぱり特別ですね」
美咲がぽつりとつぶやいた。
夜 新しい光の中で
診療を終えて外に出ると、空には月が浮かび、冷たい風が吹いていた。
けれど、飼い主と動物たちが見た初日の出の話を思い出すと、胸の中が温かくなる。
「先生、来年は私たちも一緒に見に行きませんか?」
美咲が笑顔で言った。
「そうだな。動物たちの元気を願いながら」
新しい一年に射す光は、まだ始まったばかりだ。




