「初詣の帰り道」
新年の朝
一月二日。
病院の前にはしめ飾りが下げられ、待合室のツリーは片付けられて、代わりに小さな門松が置かれていた。
「先生、あけましておめでとうございます!」
美咲が明るい声で挨拶する。
「おめでとう。今年もよろしくな」
窓から差し込む冬の日差しは澄み切っていて、まるで空気まで新しく生まれ変わったように感じられた。
午前 ベルと女の子のお守り
最初に来院したのはベルと女の子。
首輪には小さな赤いお守りが結ばれていた。
「初詣でベルの分もお願いしてきました!」
女の子が胸を張る。
診察台の上でベルはしっぽを振り、まるで「守ってもらうよ」と言っているようだった。
「きっと今年も元気に過ごせるな」
そう伝えると、女の子は満足そうに頷いた。
午前後半 リクと鈴の音
次にやってきたリクと加藤さん。
首輪には小さな鈴がついていて、歩くたびにちりん、と音を立てる。
「神社で授けてもらったんですよ。リクは鈴の音が気に入ったみたいで」
加藤さんが微笑む。
リクは診察台の上でも耳をぴくぴく動かし、鈴の音に合わせて首を振る。
「今年は音楽犬になるかもしれないな」
そう言うと、待合室の飼い主たちが笑った。
昼 チャイとモカ、甘酒の香り
昼頃にやってきたチャイとモカ、ご夫婦の手には初詣のおみくじが。
「二人そろって大吉でした」
ご夫婦は嬉しそうに笑った。
チャイはキャリーから出ると、ご夫婦の袖口をしきりに嗅ぎ始める。
「神社で甘酒を飲んできたからかな」
ご主人が苦笑する。
一方モカはキャリーの中で丸くなり、少し眠たそう。
「人混みに疲れたみたいです」
穏やかなその姿に、待合室はほんのり和やかになった。
午後 ユキと清らかな気配
午後にやってきたユキは、真新しい首輪をしていた。
「新年に合わせて買ったんです」
飼い主さんが嬉しそうに話す。
ユキは静かに窓際に座り、差し込む光を浴びていた。
その白い姿は神社の白い雪景色を思わせ、待合室の空気まで清らかにしているように感じられた。
「ユキを見ると、なんだか神様に会った気分になりますね」
美咲が小さく笑った。
夕方 待合室の新年談義
夕方になると、待合室では自然と「初詣」の話題が広がった。
「うちは犬用のお守りを買いました」
「うちはおみくじが吉で、健康に気をつけろって」
「ベルちゃんのお守り、かわいい!」
犬や猫たちはその横でしっぽを振ったり眠ったり。
飼い主同士の笑顔と、動物たちの穏やかな姿が入り混じり、まるで小さな新年会のようだった。
夜 新しい一年へ
診療を終え、門松の横に立って空を見上げる。
冬の夜空には無数の星が瞬いていた。
「先生、今年もいい一年になりそうですね」
美咲が息を白くしながら言う。
「動物たちと一緒なら、きっとな」
新しい年の始まりを胸に刻みながら、私は病院の明かりを消した。




