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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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初夏の照りつける太陽と、赤くただれた肉球、あるいはアスファルトの隠れた牙

初夏の照りつける太陽と、赤くただれた肉球、あるいはアスファルトの隠れた牙


### 1. 晴れ渡る初夏の青空と、痛む足取り


六月中旬。京都の街に梅雨の晴れ間が広がり、太陽の光がジリジリとアスファルトを照りつけるようになったある日の午後。

今日の午前、診察室にやってきたのは、好奇心旺盛な4歳のゴールデン・レトリーバー「レックス」君(男の子)と、少し申し訳なさそうな表情の飼い主の井上さんです。


「先生、さっきお昼過ぎに少しだけお散歩に行ってきたんですが、帰ってきたらレックスがなんだか前足を地面につけるのを嫌がって、ピョンピョンと引き上げるように歩いていて……。肉球を触ってみたら、皮がペロッと剥けて真っ赤にただれているんです!」


診察台の上で、レックス君は痛む前足をかばうようにペロペロとなめ続け、触られそうになると少し身を引いて痛そうにクンクンと鳴いています。診察すると、熱せられたアスファルトによって肉球の表面が熱傷(火傷)を起こしているサインが見られました。


「井上さん、すぐにお連れいただき正解です。これは『初夏の急激な日差しとアスファルトの蓄熱による、肉球の熱傷(火傷)』ですね。真夏でなくても、晴れ渡ったこの時期の日中は、道路の表面温度が私たちが想像している以上に跳ね上がり、ワンちゃんたちのデリケートな足裏を容赦なく襲うんです」


### 2. なぜ「初夏の晴れ間」は肉球や皮膚を傷つけるのか


多くの飼い主さんは「まだ夏本番の猛暑日じゃないから、日中のお散歩も大丈夫だろう」と思いがちですが、初夏の強い日差しとアスファルトには厳しい罠が潜んでいます。


* **「アスファルトの表面温度」の恐ろしい罠:** 気温が25度や28度程度の過ごしやすい陽気であっても、直射日光が当たっているアスファルトの表面温度は、あっという間に50度近くまで跳ね上がります。人間の皮膚よりもはるかに薄く敏感なワンちゃんの肉球にとって、それは熱いフライパンの上を歩くようなものです。

* **地面からの距離が近いことによる「全身への熱ダメージ」:** 背の低い小型犬はもちろん、レックス君のような大型犬であっても、四六時中熱せられた地面のすぐ近くを歩くことで、肉球だけでなく体全体に熱負担がかかります。

* **毛の薄い部分への「強い紫外線(日光皮膚炎)」:** お腹や鼻筋、耳のフチなど、被毛が薄い部分に初夏の強い紫外線が長時間当たり続けることで、皮膚が赤くただれる「日光皮膚炎(サンバーン)」を引き起こすリスクもあります。


### 3. 愛犬を初夏の太陽と熱から守る「3つの足元防衛術」


「レックスがあんなに痛い思いをしていたなんて……。『お散歩の時間を少しずらせば大丈夫』と油断して、日差しの強い時間帯に歩かせてしまった私が本当に悪かったです」と深く反省する井上さんに、僕は足元を守るためのポイントをお伝えしました。


1. **お散歩前の「手のひらチェック(熱さの確認)」の徹底:** お出かけする前に、人間の手のひらをアスファルトの地面に数秒間しっかりと当ててみましょう。「熱い」「痛い」と感じる温度であれば、ワンちゃんを歩かせるのは絶対にNGです。

2. **お散歩は「早朝の涼しい時間帯」への完全シフト:** 太陽が昇りきってアスファルトが熱を帯びる前(早朝の涼しい時間)や、日が沈んで十分に地面が冷えた夜間に限定して、お散歩のスケジュールを組み立てましょう。

3. **もしものときの「冷水での初期冷却と動物病院の受診」:** お散歩後に足を引きずったり、肉球の色が変わっていたりする場合は、すぐに冷たい水道水や濡れタオルで肉球の熱をしっかりと冷まし、早めに動物病院で適切な治療を受けさせましょう。


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### 4. 癒やされた肉球と、安心の笑顔


レックス君のただれた肉球には、痛みを和らげる消炎軟膏を塗り、感染を防ぐための保護包帯と靴下を装着しました。数日間、お散歩の時間を早朝に変更して安静に過ごさせると、肉球の皮膚は見事に再生し、レックス君は再び元気いっぱいに足取り軽く歩けるようになりました。


「先生、お薬と足のケアのおかげで、レックスの肉球がすっかり綺麗に治って、また元気に走れるようになりました! これからはお散歩前に必ず地面の熱さを自分の手で確かめます!」

井上さんは心からの安心した笑顔で、レックス君を優しくなでました。


### 5. 初夏の京都に灯る診察室の明かり


窓の外では、京都の街に初夏の青空が広がり、夕暮れの涼しい風が心地よく吹き抜けてすべての生き物たちの息吹を優しく包み込んでいました。

「先生、お疲れ様です。初夏の晴れ間って本当に気持ちがいいけれど、太陽の光が照りつけるアスファルトって、ワンちゃんたちの肉球にとってこんなにも危険なフライパンになっていたんですね」

看護師の河野が、足裏用の保護包帯を丁寧に整理しながら引き締まった表情でつぶやいた。


「本当にそうだね。初夏の爽やかな景色の裏側には、こうした強い日差しと熱が織りなす見えない足元の試練がそっと隠されている。だからこそ、私たちがしっかりと地面の温度を確かめ、お散歩の時間帯を愛情深く調整して彼らの足元を守り抜くこと。それが、この輝く季節を心から安全に楽しむための最高のエールなんだよね」


窓の向こうの夕空の下、温かな家々の窓から漏れるオレンジ色の明かりが、静かな夜の道を優しく照らし出していました。

初夏の照りつける太陽と、赤くただれた肉球の痛みが伝える足元の罠の中に。

確かな手のひらチェックと、愛を込めた毎日の優しい冷却ケアを。

どんなに季節が巡り、まぶしい太陽が空に輝いていこうとも、大好きな家族みんなが笑顔で、いつまでも健やかに心拍を弾ませながら温かな明日へ歩んでいけるように。

僕たちの動物病院の明かりは、今夜もすべての家族の「安全な足元と健やかな日常」を、初夏の風と共に守り続けます。

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