「待合室のクリスマスソング」
音楽を流す朝
十二月下旬、街はすっかりクリスマス一色だった。
商店街からも軽快な音楽が流れ、行き交う人々はプレゼントを抱えて歩いている。
「先生、これ借りてきました!」
美咲が小さなスピーカーを持って病院に入ってきた。
「商店街の方に勧められて……待合室で音楽を流してみませんかって」
「いいな。今日は祝日だし、きっと気分も明るくなる」
さっそくツリーの横にスピーカーを置き、音量を控えめにしてスイッチを入れる。
柔らかなクリスマスソングが待合室に広がり、病院が一気に華やいだ。
午前 ベルとリズム
最初に来院したベルは、曲が流れるやいなやしっぽを大きく振り始めた。
女の子が笑いながら「ベル、踊ってるみたい!」と声を上げる。
診察台でも、音楽に耳を傾けるように首をかしげていた。
「今日はベルのテーマソングだな」
そう言うと、女の子は「クリスマスの日は毎年踊るかも!」と楽しそうに笑った。
午前後半 リクと静かな音楽
次に来たリクは、待合室に入った瞬間に少し不安そうな顔をした。
普段と違う音が流れているせいだろうか。
しかし、曲が穏やかなバラードに変わると、リクはゆっくりと座り込み、耳を傾け始めた。
「この子、家でもピアノを弾くと落ち着くんです」
加藤さんがそっと話す。
診察を終える頃には、リクはウトウトとまぶたを閉じていた。
「音楽療法ってやつだな」
私は心の中で微笑んだ。
昼 チャイとモカのハーモニー
昼頃、ご夫婦と一緒にチャイとモカがやってきた。
キャリーから出ると、チャイは音に合わせて小さく鳴き声を上げ、モカは椅子の下で静かに丸くなる。
「チャイは歌うのが好きみたいで、音楽番組のときも鳴くんですよ」
ご夫婦が笑う。
ツリーの灯りと音楽に包まれて、待合室はちょっとしたコンサートホールのようになった。
午後 ユキと雪の旋律
午後、ユキがやってきた。
ちょうど流れていたのは、雪の夜を思わせる静かな旋律。
ユキは窓際に座り、外を見つめながら耳をぴくりと動かしていた。
音楽に寄り添うように白い毛並みが光り、まるで物語の挿絵の一場面のようだった。
「ユキにはこういう曲が似合いますね」
飼い主さんがつぶやくと、待合室の誰もが頷いた。
夕方 合唱のように
夕方、混み合った待合室で音楽が少し大きめに流れた。
すると、不思議なことに犬たちがそれぞれに小さく鳴き声を上げ、まるで合唱のようになった。
「ベルもリクも参加してる!」
「チャイまで声を合わせてるわ」
飼い主たちの笑い声が響き、待合室は楽しいお祭りのようになった。
猫たちは少し迷惑そうな顔をしていたが、それもまた微笑ましい光景だった。
夜 音楽の余韻
診療が終わり、音楽を止めた途端、病院は急に静かになった。
「さっきまで本当にパーティー会場みたいでしたね」
美咲が笑う。
「でも、音楽があるだけで、動物も人もこんなに和むんだな」
窓の外にはイルミネーションが輝いていた。
音楽は止まっても、その温かな余韻は心に残り、病院を包み込んでいた。




