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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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ぬくもりの落とし穴と、焦げたヒゲ、あるいは冬の家電に潜む静かなる牙

ぬくもりの落とし穴と、焦げたヒゲ、あるいは冬の家電に潜む静かなる牙


### 1. ぬくもりのリビングと、ぐったりした口元


十二月下旬。京都の底冷えする寒さのなか、お家の中ではエアコンや電気ストーブ、コタツなどの暖房器具がフル稼働しているお昼下がり。

今日の午前、診察室にやってきたのは、好奇心旺盛な1歳のトイ・プードル「チョコ」君(男の子)と、青ざめた表情の飼い主の田中さんです。


「先生、大変なんです! さっきリビングで少し目を離した隙に、チョコがテレビ台の裏にあるコードをガジガジとかじってしまって……。その直後に急にキャンと鳴いてその場に倒れ込み、お口の周りが少しただれて、ヨダレをダラダラ垂らしているんです!」


診察台の上で、チョコ君は痛む口元を前足で気にするようにこすり、少しぐったりとした様子で浅い呼吸をしています。お口の中を注意深く観察すると、電流によって唇や舌の粘膜が白くただれ、軽度の電気熱傷(感電によるやけど)を起こしていました。


「田中さん、すぐにお連れいただき正解です。これは『冬の暖房器具や配線コードへの噛みつきによる、感電事故および口腔内の電気熱傷』ですね。寒くなって室内で過ごす時間が長くなる冬場は、こうした家電製品にまつわる思わぬ事故が非常に増える季節なんです」


### 2. なぜ「冬の暖房器具」はペットに牙をむくのか


多くの飼い主さんは「お家の中だから安全」と思いがちですが、冬の便利で温かい家電製品の数々は、ペットたちの目線からは好奇心をそそる危険なトラップに満ちています。


* **「配線コード」の噛みつきによる感電と肺水腫:** 動くものや噛みごたえのあるコード類は、特に若い子犬や猫ちゃんにとって格好のおもちゃです。通電中のコードを噛み切ってしまうことで高電圧の電流が体を走り、お口のやけどだけでなく、数時間後に命に関わる「肺水腫(肺に水が溜まる症状)」を引き起こすことがあります。

* **「電気ストーブやファンヒーター」の近すぎによる低温やけど・被毛の焦げ:** 寒がりなペットたちは、暖房器具の温風が出る吹き出し口や熱源に限界まで近づこうとします。熱さを自分でうまく調整できず、同じ場所を長時間温め続けられることで、皮膚の深部までダメージを受ける「低温やけど」や、ヒゲ・被毛が焦げる事故が多発します。

* **「コタツやホットカーペット」の中での脱水と熱中症:** ぬくぬくとした暖かい空間に何時間も入り浸ることで、知らず知らずのうちに体内の水分が奪われ、軽い脱水や熱中症の症状を引き起こすことがあります。


### 3. 愛犬・愛猫を冬の家電事故から守る「3つの安全防衛術」


「チョコがあんなに危ない事故に遭うなんて……。家の中だからって安心しきって、コードの対策を怠っていた私が本当に情けないです」と悔やむ田中さんに、僕は冬の家電を守るための防衛策をお伝えしました。


1. **配線コードの「完全ガード(プロテクターチューブの装着)」:** むき出しになっているすべての電源コードや延長コードに、硬いプラスチック製の「配線カバー(コードプロテクター)」や噛みつき防止用の苦味スプレーを施し、ペットの歯が絶対に届かないよう徹底的に隠しましょう。

2. **暖房器具の「柵(ガード)の設置」と安全距離の確保:** 電気ストーブやファンヒーターの周囲には、ペットが物理的に近づけないよう専用の金属製サークル(ストーブガード)を必ず設置し、熱源から十分な距離を保ちましょう。

3. **「長時間のぬくもり空間の制限(定期的な水分補給)」:** コタツやホットカーペットを使用する際は、暑くなったら自分で出入りできるように出入り口を常に開けておき、定期的に呼び出して新鮮なお水を飲ませるなど、こまめな見守りを行いましょう。


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### 4. 癒やされたお口と、穏やかな日常


チョコ君のお口の中のやけどには、痛みを和らげる消炎ゲルを塗り、感染を防ぐための飲み薬を処方しました。数日間は柔らかいフードを中心に与えて様子を見ると、お口の痛みもすっかり引き、チョコ君は再び元気にお部屋をトコトコと歩き回るようになりました。


「先生、お薬とお口のケアのおかげで、チョコがすっかり元気にご飯を食べられるようになりました! テレビ裏のコードにも全部カバーを付けて、ストーブの周りには絶対に近づけないように柵を置きました!」

田中さんはホッと胸を撫で下ろし、チョコ君を優しく抱きしめました。


### 5. 冬の京町家に灯る診察室の明かり


窓の外では、京都の冬の夜空が深く静まり返り、冷たい星の光が街の家々の屋根を優しく照らし出していました。

「先生、お疲れ様です。冬の寒さを温めるための暖房器具やコードって、お家の中にあるからこそ、かえってペットたちにとっては大きな危険が潜んでいるんですね」

看護師の河野が、安全ガードのパンフレットを棚にしまいながら引き締まった表情でつぶやいた。


「本当にそうだね。温もりや便利さの裏側には、常にこうした予期せぬ事故の牙が隠されている。だからこそ、私たちが先回りしてコードをガードし、暖房器具の周りに安全なバリアを作ってあげることが、この寒い季節を安心して乗り切るための最高のエールなんだよね」


窓の向こうの冬景色の中、温かな家々の窓から漏れるオレンジ色の明かりが、静かな夜の道を優しく照らし出していました。

ぬくもりのリビングと、見えない家電の罠の中に。

確かな配線ガードと、愛を込めた毎日の優しい見守りを。

どんなに厳しい冬の寒さが巡り、あたたかな暖房が恋しい季節になろうとも、大別の家族みんなが笑顔で、いつまでも健やかに心拍を弾ませながら温かな明日へ歩んでいけるように。

僕たちの動物病院の明かりは、今夜もすべての家族の「安全なぬくもりと穏やかな日常」を、優しく守り続けます。

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