「待合室のクリスマスツリー」
ツリーを持ち込む朝
十二月も半ば。
街のあちこちにイルミネーションが灯り、店先には赤や緑の飾りが並んでいた。
「先生、これどうしましょう?」
美咲が大きな段ボール箱を抱えて病院に入ってきた。
「それは?」
「商店街で配っていたんです。小さなクリスマスツリー。病院に置いたらどうかなって」
箱を開けると、高さ一メートルほどのツリーと、色とりどりのオーナメントが入っていた。
「いいじゃないか。待合室が明るくなるな」
午前 ツリーとベル
ツリーを組み立てて待合室に置いたちょうどそのとき、ベルと女の子がやってきた。
「わぁ!クリスマスツリー!」
女の子は目を輝かせ、ベルも首を伸ばしてクンクン匂いをかいだ。
「ベルにもオーナメントをつけてもらおうか」
美咲が提案し、女の子が小さな星をベルの首輪に結びつけた。
ベルは得意げに胸を張り、ツリーの前に座る。
まるで飾りの一部になったようで、待合室にいた飼い主たちが笑顔で拍手を送った。
午前後半 リクのいたずら心
続いて来院したリクは、診察前にツリーへまっしぐら。
キラキラ光るボールのオーナメントにじゃれつき、前足でチョイチョイ。
「リク、こら!」
加藤さんが慌てて止める。
美咲がすぐにツリーを支え、倒れるのを防いだ。
「リクちゃん、オーナメントに夢中ですね」
私は苦笑しながら言った。
診察台でもリクはオーナメントを探すように首を伸ばし、待合室へ戻るとまたツリーに直行した。
加藤さんは「この子は本当に落ち着きがなくて」と頭を抱えたが、その表情にはどこか楽しさも混じっていた。
昼 チャイとモカの観察
昼頃にご夫婦と来院したチャイとモカ。
キャリーから出すと、二匹はそろってツリーの下に歩み寄った。
チャイは枝に顔を近づけ、オーナメントをじっと観察。
モカは少し離れたところで腰を下ろし、ツリー全体を静かに眺めていた。
「チャイは何でも触りたがるけど、モカは観察派なんです」
ご夫婦が笑う。
ツリーの下に置かれた白い布をふかふかのベッドと勘違いしたのか、モカはそこに丸くなってしまった。
「雪の上で眠ってるみたいですね」
美咲がつぶやき、待合室の空気が和んだ。
午後 ユキと星の飾り
午後にやってきたユキは、ツリーを一瞥すると、そのまま窓際に歩いて座った。
興味を示さないように見えたが、ツリーのてっぺんに飾った金色の星が窓越しに光ると、ユキはゆっくりと視線を上げた。
「ユキは派手なのはあまり好きじゃないけど、星は気に入ったみたいですね」
飼い主さんがそう言った。
白い毛並みに冬の日差しが差し込み、ユキとツリーが並んで輝いて見えた。
夕方 飾り付け合戦
夕方、診療が少し落ち着いた頃。
待合室にいた子どもたちが「飾りを増やしたい!」と言い出した。
そこで、美咲がオーナメントの袋を出し、みんなでツリーを飾ることに。
星やリボン、鈴を次々とつけていくと、ツリーは一気に華やかになった。
ベルは下の方の飾りをクンクン、リクはまたチョイチョイ、チャイは枝に顔を突っ込み、モカは下でのんびり、ユキは静かに見守る。
それぞれの個性がツリーの周りに集まり、待合室はまるで小さなパーティのようだった。
夜 灯りをともして
診療が終わる頃、ツリーに小さな電飾を灯した。
赤や青、緑の光が点滅し、待合室をほんのり照らす。
「きれい……」
美咲がつぶやいた。
「動物たちも、この灯りを見たら安心してくれるかもしれないな」
窓の外は冷たい冬の夜。
でもツリーの灯りがともる病院は、どこよりも温かく見えた。




