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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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「落ち葉と遊ぶ午後」

秋の朝


9月も半ば。朝、病院の庭に出ると、桜や欅の葉が黄色や赤に色づき、地面にひらひらと舞い落ちていた。

風が吹くたび、カサカサと音を立てて葉が転がる。


「先生、庭がすっかり秋ですね」

美咲が掃き掃除をしながら笑う。


「全部掃いても、またすぐ積もるぞ」

私は落ち葉を踏みしめながら答えた。

今日は、そんな落ち葉が思わぬ役者になる一日だった。


午前 ベルと落ち葉の山


最初にやってきたのはベルと女の子。

診察を終えたあと、庭で少し遊んでいくことになった。


女の子が熊手で集めた落ち葉の山に、ベルは興味津々。

鼻を突っ込み、思い切りジャンプして飛び込む。


「わぁっ!」

落ち葉が舞い上がり、女の子も笑いながらベルと一緒に転がった。


「ベルも秋を楽しんでるな」

私はその様子を眺めながら思った。

庭は一瞬、黄金色の紙吹雪に包まれた。


午前後半 リクと追いかけっこ


続いて来院したリク。

診察後、加藤さんと庭に出ると、風に吹かれて一枚の葉がひらひらと舞った。


リクはすぐに反応し、全力で追いかけ始める。

しっぽを振りながら、落ち葉を前足で押さえ、また風にさらわれ、さらに追いかけ……

その繰り返しに加藤さんも笑顔になった。


「リク、楽しそうだなぁ。家でもやってくれたら掃除が助かるのに」

冗談交じりの言葉に、私も思わず笑ってしまった。


昼 チャイとモカの落ち葉ベッド


昼前、ご夫婦がチャイとモカを連れてきた。

庭の一角に落ち葉がこんもりと積まれているのを見つけ、二匹はすぐに駆け寄った。


チャイは落ち葉の上にごろんと横たわり、ふかふかのベッドのようにくつろぐ。

モカは落ち葉を前足でかき分け、下から何かを探すように夢中だ。


「まるで宝探しだな」

ご主人が笑うと、奥さんも「掃除は大変だけど、楽しそうだからいいか」と肩をすくめた。


落ち葉に包まれる二匹の姿は、秋の絵本の一場面のようだった。


午後 ユキと舞う葉


午後にやってきたのはユキ。

キャリーから出ると、風に乗ってひらひらと葉が舞い落ちた。


ユキはじっと目で追い、突然「ぴょん」と跳び上がる。

しかし葉はするりと逃げ、ユキは地面に着地して不満げに「にゃあ」。


飼い主さんは笑いながら、ユキの頭を撫でた。

「落ち葉相手に真剣なんだから」


私はその光景を見ながら、自然の遊び相手はどんなおもちゃより豊かだと感じた。


夕方 みんなで落ち葉掃除


夕方、診療の合間に美咲と庭の落ち葉を集めていると、ベルやリクたちの飼い主が声をかけてくれた。

「手伝いますよ」


みんなで落ち葉を集めるうちに、自然と笑い声が広がる。

子どもたちは山にした落ち葉へ飛び込み、犬たちも加わって大はしゃぎ。

まるでちょっとした秋祭りのようだった。


夜 落ち葉の余韻


診療が終わり、外に出ると、月明かりに照らされた庭に落ち葉が散らばっていた。

昼間の賑やかな声がまだ残っているような気がする。


「先生、落ち葉って片付けても片付けてもまた落ちてきますね」

美咲がほうきを抱えながら言う。


「それが秋だからな。今日はいい思い出になった」

私は笑い、落ち葉を一枚拾い上げた。


黄金色の葉は、動物たちの笑顔とともに、この秋を彩る小さな宝物だった。

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