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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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「ひだまり夏祭り」

夏の夕暮れ


7月の終わり。

夕方になっても暑さは残り、空は茜色に染まっていた。


「先生、準備できました!」

美咲がうちわを片手に駆け込んでくる。


待合室には提灯の飾り、庭には小さな屋台風の机。

ヨーヨー釣り用のたらいや、スイカの大玉も準備されている。


「さあ、みんなが来るぞ」

私は汗をぬぐいながら答えた。


祭りのはじまり


最初にやって来たのはベルと女の子。

ベルには小さな浴衣風のバンダナが巻かれている。


「わぁ、夏祭りだ!」

女の子が声をあげると、ベルも尻尾を振った。


次に加藤さんとリク。

「こんな楽しいことをしてくれるとはねぇ」

扇子をあおぎながら笑っている。


続いて、チャイとモカをご夫婦が抱えてやって来た。

猫たちは少しきょとんとしながら、提灯を見上げていた。


ユキも飼い主さんと一緒に現れ、白い毛並みが祭りの光に映えていた。


ヨーヨー釣りと動物たち


庭の一角で、子どもたちがヨーヨー釣りを始める。

ベルは水面に浮かぶカラフルな風船を覗き込み、鼻でつつこうとする。


「ベル、落ちちゃうよ!」

女の子が笑いながら抱きとめる。


リクは釣り上げたヨーヨーをじっと見て、しっぽを振る。

チャイとモカは窓辺からその様子を観察し、目を輝かせていた。


スイカ割りの時間


「さあ、スイカ割りをしよう!」

美咲が元気に声を上げ、子どもたちが集まる。


目隠しをして棒を持ち、わいわいと声をかけながら進む。

「右だよ!」「もうちょっと左!」


ベルは興奮して吠え、リクは声をあげる子どもたちを不思議そうに眺める。

やっと「ぱかん!」と音を立ててスイカが割れると、歓声があがった。


割れたスイカを分けると、ユキが一口だけもらった。

冷たさに驚いたように目を瞬かせ、それから嬉しそうにぺろりと舐めた。


かき氷と夕涼み


夜風が少し涼しくなったころ、かき氷がふるまわれた。

子どもたちはいちごやメロン味を選び、大人たちは涼しげに氷を口にする。


「リクには氷だけね」

加藤さんが小さな器に氷を入れると、リクはガリガリとかじって涼しさを楽しんでいた。


チャイとモカには、冷たいゼリー状のおやつ。

二匹は仲良く並んでぺろぺろと舐め、ご夫婦はその様子に目を細めていた。


小さな花火


最後に、庭の隅で手持ち花火をした。

子どもたちの歓声、パチパチと光る火花。

ベルは少し驚いて女の子の後ろに隠れたが、やがて落ち着いて一緒に眺めていた。


ユキは静かに花火を見つめ、モカは窓越しにじっと光を追っていた。

夏の夜を彩る小さな灯りに、みんなの表情が柔らかく染まっていた。


祭りの終わり


花火が終わり、提灯の灯りも消える。

「楽しかったね」

「また来年もやりたいね」

そんな声があちこちから聞こえる。


「先生、動物病院なのに、今日は町の集会所みたいでしたね」

美咲が笑う。


「病院はみんなの場所だからな。動物も人も、楽しく過ごせればそれでいい」

私は空を見上げる。

そこには夏の星が、静かに瞬いていた。

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