こたつ猫の「脱水」注意報、あるいは幸福の罠
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こたつ猫の「脱水」注意報、あるいは幸福の罠
### 1. 完璧な「丸」の形
一月、京都の寒さは底を打ちます。この時期、猫の飼い主さんから届く報告は平和そのもの。「先生、うちの『ルナ』は一日中こたつの中から出てこないんです。たまに熱くないか心配で見に行くと、とろけるような顔で寝ていて。本当に幸せそうです」
しかし、その「幸せな光景」の裏側で、猫の体には静かな変化が起きています。
### 2. 乾いていく「砂漠」の体
「お母さん、こたつの中は猫にとってのパラダイスですが、同時に**『脱水』の温床**でもあるんです」
猫はもともと砂漠出身の動物。暑さには強いのですが、その分「喉の渇き」に鈍感な傾向があります。
* **水分喪失:** こたつの中の乾燥した熱気にさらされ続け、呼気や皮膚からじわじわと水分が奪われます(不感蒸泄)。
* **運動不足:** ぬくぬくと心地よいため、水を飲みに行くためにわざわざ寒い廊下へ出ようとしません。
* **尿の濃縮:** 水分が減ると尿が濃くなり、秋編でお話しした「尿石症」や、高齢猫なら「腎機能の低下」を一気に加速させます。
### 3. 背中の皮膚が教えてくれること
診察室でルナちゃんの背中の皮膚をつまみ上げると、戻りがわずかに遅い「テント現象」が見られました。
「見てください。これは脱水のサインです。血液がドロドロになると、内臓への負担が増えるだけでなく、便秘にもなりやすくなります。こたつの中で熟睡している間に、ルナちゃんの体は干からびたミカンのようになりかけているんです」
### 4. 「極楽」を安全にする工夫
「こたつを禁止する必要はありません。ただ、猫の『怠け心』を先回りしてケアしてあげましょう」
1. **水飲み場を『こたつ横』に:** 暑くなったら顔だけ出して、すぐに飲める場所に新鮮な水を置いてください。
2. **ウェットフードのスープ化:** 冬はウェットフードを少しぬるま湯で伸ばしてあげましょう。食事と一緒に強制的に水分を摂らせるのが一番確実です。
3. **換気の習慣:** ずっと潜らせっぱなしにせず、数時間に一度は布団をめくって空気を入れ替えてください。
### 5. ぬくもりの番人
「先生、お疲れ様です。……猫がこたつで丸くなるのは冬の風物詩ですけど、まさかそれが病気の原因になるなんて、飼い主さんも驚いていましたね」
河野が、加湿器のタンクに水を補充しながら言った。
「そうだね。彼らにとっての『最高』が、体にとっての『最適』とは限らない。そこを調整してあげるのが、僕たち人間の役割なんだ」
病院の入り口で、丸まって寝ていた看板猫の「みたらし」が、大きなあくびをしてから渋々お水を飲みに行った。
「おっ、みたらしは優秀だな。ちゃんと自分の体の声が聞こえてる」
窓の外では、雪が静かに積もり始めていた。
今夜、京都中のこたつ猫たちが、潤いのある喉を鳴らして眠れますように。
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