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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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「夏の暑さと小さな工夫」

梅雨明けの朝


7月に入り、空は真っ青に晴れ渡っていた。

梅雨が明けたばかりで、朝から気温はぐんぐん上がる。


「先生、今日はすごく暑くなりそうですね」

美咲が受付の温度計を見て、少し顔をしかめた。


「熱中症に注意だな。動物たちも人間と同じだから」

私は窓を少し開け、風を通した。

それでも、外はすでに夏の匂いがしていた。


午前 ベルの暑さ対策


午前最初に来院したのはベルだった。

女の子は麦わら帽子をかぶり、ベルにはひんやり冷感のバンダナを巻いている。


「先生、ベルが最近お散歩の途中で座り込んじゃうんです」

女の子が心配そうに言う。


「夏のアスファルトはとても熱いからね。朝や夕方、涼しい時間に散歩したほうがいい」

私は女の子に説明しながら、肉球を保護する靴や冷感マットの話もした。


ベルは舌を出して、診察室の床にぺたりと伏せていた。

女の子は真剣にうなずきながら、メモをとっていた。


午前後半 リクと冷たいタオル


次に来たのはリク。

加藤さんは扇子でパタパタしながら入ってきた。


「リクが暑がってるみたいでね。家では濡れタオルを冷蔵庫で冷やして首に巻いてるんですよ」


「それはいい工夫ですね。エアコンと合わせれば十分涼しく過ごせます」

私はリクを診ながら答える。


リクは診察台の上で目を細め、冷たいタオルの心地よさを思い出しているようだった。

加藤さんは「犬も人間も同じですね」と笑った。


昼 チャイとモカの暑さ対策


昼休み前、チャイとモカがご夫婦とやってきた。

「最近、この子たちが窓辺にばかり座って、ぐったりしてるんです」


窓辺は日差しが強く、猫にとってはサウナのようになっていたらしい。


「遮光カーテンや冷却ジェルマットを使うといいですよ」

私はアドバイスした。


するとご夫婦は顔を見合わせ、

「私たちの昼寝用の冷却マットを取られそうだなぁ」

「じゃあもう一枚買うしかないね」

と笑い合った。


チャイとモカは待合室で寄り添い、外の蝉の声を聞きながら気持ちよさそうに目を閉じていた。


午後 ユキと水分補給


午後にはユキがやって来た。

真っ白な毛並みは夏の日差しを受けても美しく、少し汗ばむ空気に涼やかさを運んでくれるようだった。


「先生、この子、水をあまり飲まないんです」

飼い主さんが心配そうに言う。


「冷たい水や氷を浮かべたお皿を試してみてください。ペット用の給水器もいいですよ」

私は説明した。


ユキは診察のあと、待合室に置いた冷たい水に鼻を近づけ、ぺろりとひと口。

飼い主さんはほっとした笑みを浮かべた。


夕方 花とセミの声


夕方、診療が一段落したころ。

病院の庭では、蝉が力強く鳴きはじめた。

紫陽花は色あせ、代わりに百日紅のつぼみが膨らみ始めている。


「先生、夏って、ちょっと忙しいけどにぎやかですね」

美咲が汗をぬぐいながら言った。


「動物たちも人間も、暑さを乗り越える工夫が大事だな」

私は笑いながら答えた。


そのとき、玄関先で小さな子どもが指をさして言った。

「ママ、セミのぬけがら!」

木の幹に残された抜け殻を見て、周りの人たちも自然と足を止めた。


夏の訪れは、動物たちだけでなく人の心にも小さな驚きを運んでいた。


夜 涼しさを願って


診療が終わるころには、ようやく気温が下がり、夜風が少し涼しさを運んできた。

扇風機の音と、外の虫の声。


「先生、明日も暑くなるみたいですよ」

「そうか……。じゃあ、明日もみんなの工夫を聞かせてもらおう」


病院は小さな命を守る場所。

夏を元気に過ごせるように――

そんな願いが、夜の静けさに溶けていった。

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