第142話「夏の通り雨」
昼過ぎ、空が急に暗くなったかと思うと、ざぁっと強い雨が降り出した。
病院の窓に雨粒が勢いよく打ちつけ、外の景色がまるで水墨画のようににじんで見える。
「わぁ、すごいあめ……!」
女の子は窓にぴったりくっつき、流れる雨筋を指でなぞって遊んでいた。
わんこたちは最初ちょっと驚いて吠えたが、先生が「大丈夫だよ」と背中を撫でると、安心してごろんと横になった。猫たちは窓辺に並び、目を細めながら静かに雨を眺めている。メェ子は小屋の中から顔をのぞかせて、雨の音に耳をぴくぴく動かしていた。
***
しばらくすると、雨音が少しずつやわらぎ、外にかすかな光が差し込んだ。
「やんできたね!」
女の子が外に出てみると、土の匂いがふわっと広がり、草や木の葉はしっとり濡れてキラキラ光っていた。
空には大きな虹がかかっていた。
「わぁぁ……!」
女の子は思わず声をあげ、みんなを呼んだ。
わんこたちは泥の上をぴょんぴょん走り、猫たちは濡れるのを嫌がりながらも縁側に出てきて、虹を見上げている。メェ子は嬉しそうに草を食べながら「メェ〜」と鳴いた。
***
先生が麦茶を持ってきて、縁側でみんな並んで座った。
「夏の通り雨は、空気をきれいにしてくれるんだよ」
女の子は冷たい麦茶を飲みながら、虹を見上げてうなずいた。
「ほんとだね。あめのあとは、なんだかきもちいい」
遠くで蝉の声がまた響きはじめ、夏の午後が戻ってきた。
でも、さっきのざぁざぁ雨と、大きな虹の思い出は、女の子の胸にいつまでも残っていた。
陽だまりのコタロウ
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