第141話「花火とかき氷」
夏の夜、病院の庭でちいさな花火大会が開かれた。昼間はじりじりと暑かったけれど、日が暮れると風が少し涼しくなり、草の匂いと夜の湿った空気が混ざり合って心地よい。
「せんせい!はなび、はじめよ!」
女の子がうきうきと花火の袋を抱えて走ってくる。わんこたちはその後を追いかけ、猫たちはすでに縁側に並んで座り、興味津々といった顔で袋をのぞきこんでいた。
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最初は手持ち花火。先生が火をつけると、ぱちぱちと明るい火花が夜を彩った。
「わぁ〜!きれい!」
女の子の顔も、火花の光で輝いて見える。
わんこたちは最初びっくりして少し後ずさりしたが、女の子が楽しそうに笑うのを見て安心したのか、しっぽを振りながらそばに座った。猫は火花にじゃれようとして、先生に「危ないぞ」と軽く抱えられる。
線香花火になると、火は小さくなり、静かに光の玉が揺れた。
「しずかだけど、すごくきれいだね」
女の子が呟くと、みんなもじっと見つめ、庭は一瞬、夏の夜の静けさに包まれた。
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花火が終わると、次はかき氷の時間。
「いちごとメロン、どっちがいい?」
先生の問いかけに、女の子は少し悩んでから「いちご!」と元気に答える。
削った氷に赤いシロップをかけて、ひと口。
「つめたーい!でもおいしい!」
わんこたちにはシロップなしの氷を少し分けてあげると、夢中でぺろぺろ。猫たちは慎重に舐めて、ひやっとして首をすくめながらも、また舌を伸ばした。
メェ子には冷たいスイカの皮を。むしゃむしゃ食べて満足そうに「メェ〜」と鳴く。
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夜空には、遠くの町から大きな花火の音が聞こえてきた。どん、と響くたびに、少し遅れて空に赤や青の光が広がる。
「わぁ、むこうでもやってるんだね!」
女の子は目を輝かせ、みんなで空を見上げた。
庭での小さな花火と、遠くの大きな花火。両方が重なって、夏の夜は一層にぎやかだった。
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花火もかき氷も終わり、片づけがすんだころにはもう夜遅く。
女の子は縁側に座り、ひんやりとした夜風にあたりながらつぶやいた。
「なつって、たのしいね……」
先生は隣に腰を下ろし、にっこり笑った。
「そうだな。夏は暑いけど、思い出もいちばん鮮やかに残るんだ」
わんこたちが足元で眠り、猫たちが膝に乗り、メェ子が草の上でごろんと横になる。みんなに囲まれて、女の子の夏の夜は静かに更けていった。




