第136話「雨あがりの散歩道」
朝からしとしと降り続いていた雨が、ようやく昼過ぎにやんだ。窓の外に目を向けると、病院の庭は雨粒を含んでしっとり濡れ、緑がいっそう鮮やかに見える。
「せんせい、あめ、やんだよ!」
女の子が声を弾ませると、わんこたちはすぐに玄関の前に集まり、散歩に行きたいとばかりにしっぽを振り始めた。
「よし、みんなで行こうか。ただし、水たまりに飛び込まないようにね」
先生がリードを用意し、女の子は長靴を履いて傘を片手に準備を整える。
***
雨上がりの道は、まだところどころに大きな水たまりが残っていた。空気はひんやりとしているのに、湿った土の匂いと草の香りが混じって、なんともいえない心地よさがある。
「わぁ、みて!みずたまりにそらがうつってる!」
女の子が指さすと、そこには青空と白い雲が小さな鏡のように映っていた。わんこがその水面をのぞきこみ、鼻をつけた途端に水が跳ねて、女の子の長靴にぱしゃり。
「きゃー!つめたい!」
でもその笑い声に、みんなの顔がほころぶ。
猫たちは散歩について来ないと思われていたが、一匹だけ、灰色の子がそっと後をついてきていた。濡れた草の上を慎重に歩き、女の子の足元までやってくる。
「にゃぁ」
「いっしょにおさんぽ?いいよ、いこう!」
***
川沿いの道に出ると、雨で少し水かさが増したせせらぎが勢いよく流れていた。その流れに沿って歩いていると、草むらの間から小さなカエルがぴょんと飛び出した。
「わっ!」
女の子は驚いて足を止めたが、わんこたちは大喜びで追いかけ回す。
「だめだめ!カエルさん、こわしちゃだめ!」
慌てて女の子が止めると、わんこたちはしぶしぶ戻ってきた。
その横で、猫がじっとカエルの跳ねる様子を目で追っている。だけど最後にはただしっぽを揺らすだけで、追いかけようとはしなかった。
***
帰り道、雲の切れ間から夕日が差し込み、濡れた道や木々が黄金色に輝いた。
「わぁ……きれい……」
女の子が立ち止まると、わんこたちも一緒に振り返り、猫は足元で丸くなる。
その景色を背に、先生がぽつりとつぶやいた。
「雨があるから、こうして光も映えるんだよな」
女の子はにっこり笑って答える。
「うん。あめって、いやなことばかりじゃないね」
***
病院に戻ると、タオルでわんこや猫たちを拭いてやり、女の子も長靴を脱いでほっと一息。窓の外には大きな虹が弧を描いていた。
「せんせい!にじだよ!」
「ほんとだ。今日はいい散歩になったな」
虹を見上げるみんなの顔は、雨上がりの空と同じくらい明るかった。




