第133話「こたつとみかん」
冷たい風が病院の窓を叩くようになり、外はすっかり冬の景色になっていた。庭に積もった雪は日に日に厚みを増し、吐く息は白く濃くなる。そんなある日、院長先生が倉庫から大きな荷物を運んできた。
「さぁ、今年も出すとしようか」
「なになに?」
首をかしげる女の子の前で、先生が広げたのは大きな布団と四角い机。
「こたつだよ」
「こたつ!」
女の子の声に、動物たちがいっせいに集まってきた。わんこは不思議そうに机の脚をくんくん嗅ぎ、猫たちは布団の感触を確かめるように上に乗る。メェ子は「メェェ」と鳴いて首をのばし、興味津々に見つめている。
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こたつが準備され、電源が入れられると、じんわりとしたぬくもりが布団の下から広がった。女の子が足を入れた瞬間、顔がぱっと明るくなる。
「あったかい!ぜんぜんちがう!」
その様子を見て、わんこが前足を布団に突っ込み、するすると潜り込んだ。猫たちも負けじと布団の隙間から入り込み、気づけば布団の中は大混雑。女の子は笑いながら「ぎゅうぎゅうだよ!」と叫んだ。
「まぁ、こたつってのは、こうやってみんなでくっついて入るからいいんだ」
先生も布団に足を入れて、にっこり笑った。
***
「みかんもあるぞ」
先生が持ってきたかごには、つやつやしたみかんが山盛りになっていた。
「こたつとみかん!テレビでみたことある!」
女の子は目を輝かせ、みかんを一つ手に取った。皮をむくと、甘酸っぱい香りが部屋いっぱいに広がる。
わんこは興味津々で鼻を近づけるが、すぐに「すっぱそう」と言いたげに顔をしかめた。猫は皮を転がして遊び始め、メェ子は「メェ」と鳴いて、結局先生からほんの少し分けてもらった。
女の子は甘いみかんをほおばりながら、こたつの中でうとうとし始める。
「……ねむくなっちゃうね」
「こたつにはそういう魔法があるんだ」
先生が笑って言うと、すでに猫たちはすっかり丸くなって寝息を立てていた。
***
少しして、布団の上にどすんと重みがかかった。
「わぁ!?」
大きなわんこが布団の上に乗ってしまったのだ。中にいた女の子と猫が押しつぶされそうになって慌てる。
「こらこら、布団の上に乗っちゃだめだよ」
先生が苦笑しながらわんこを降ろすと、わんこはしょんぼりと布団の横に丸くなった。
それでもしばらくすると、布団から顔だけ出した猫がのそのそ出てきて、わんこの隣にぴったり寄り添う。女の子も頭を布団から出して、その光景を見てにっこり笑った。
「みんな、あったかいのがすきなんだね」
***
外は冷たい風が吹き、雪がさらさらと舞っている。けれど病院の居間では、こたつの温もりとみかんの香りに包まれて、心までぽかぽかに温まっていた。
「ふゆって、さむいけど……いいね」
女の子が小さくつぶやくと、先生もうなずいた。
「そうだな。寒いからこそ、こうしてみんなで温まれるんだ」
こたつの中、動物たちと女の子が寄り添って過ごすその光景は、冬のひとときを幸せに彩っていた。




