第124話 「柿の実と秋空」
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### 1 柿の実の色づき
朝の動物病院の庭は、すっかり秋の空気に包まれていた。
澄んだ青空の下、一本の柿の木が橙色の実をたわわにつけている。
陽の光を受けて輝くその姿は、まるで小さなランプが枝いっぱいに灯っているかのようだった。
「わぁ、柿がいっぱい!」
女の子は目を輝かせて駆け出した。
ベルはその後を追いかけ、「ほんとだ!すごい数だな!」と尻尾を振る。
チャイはジャンプして前足を伸ばすが、実にはまったく届かず、「とれないー!」と地団駄を踏む。
モカは落ち葉の上に腰を下ろし、「柿って高いところになるのよね。届くわけないじゃない」と冷静に言った。
リクは枝を見上げて「これは立派な収穫だな。自然の恵みはありがたい」と真面目に頷き、ユキは静かに「熟したものから順にいただくのがいいだろう」とつぶやいた。
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### 2 収穫作戦開始
「じゃあ、柿をとろう!」
女の子は張り切って脚立を持ってきた。
ベルは「ぼくが支えてやる!」と脚立の下にどっしりと座り込み、チャイは「ぼくも!」と真似をして横で構える。
「支えになってないわよ」とモカはあきれつつも見守った。
女の子が慎重に上へ登っていき、枝に手を伸ばす。
「とれた!」
ぽとんと落ちてきた柿を、リクが大きな前足で受け止めた。
「なかなかの重みだな」と言って葉のついた柿をそっと地面に置く。
ユキは木の幹をすらりと登り、枝の上から柿を前足で押して落としていく。
「上からの方が効率的だ」と淡々と作業を進めた。
「わぁ、いっぱいとれた!」
カゴの中はあっという間に柿でいっぱいになった。
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### 3 柿の味比べ
収穫が終わると、みんなで縁側に並んで腰を下ろした。
女の子は柿を包丁で切り分け、みんなに配っていく。
「いただきまーす!」
チャイが真っ先にぱくり。
「甘い!とろける!」と大満足。
ベルも「うまいな!秋の味だ!」と口いっぱいにほおばる。
モカは少し慎重にかじり、「……悪くないわね。甘さがやわらかい」と上品に味わった。
リクは柿を静かに噛みしめ、「自然そのままの甘み。これは身体に良さそうだ」と真顔で言う。
ユキは小さく一口食べ、「熟してから収穫したのは正解だ」と短く感想を述べた。
女の子も頬をゆるめ、「柿ってこんなにおいしいんだね」としみじみ。
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### 4 小さな騒動
夢中で食べていたチャイが、種を口から飛ばしてしまった。
「ぴゅっ!」と飛んだ種はベルのおでこに命中。
「おいっ!」
「ごめんごめん!」
二匹がわちゃわちゃしている間に、モカがしっかりと残りの柿を確保し、「これで安心ね」と前足で抱え込む。
ユキはその様子を見て「油断していると食べ損ねる」と淡々と忠告。
リクは大きなため息をつき、「食べ物を巡る争いは避けた方がいい」と言いながら柿を半分こして差し出した。
そのやりとりに女の子は大笑いし、病院の庭に明るい声が響いた。
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### 5 秋空の下で
柿を食べ終えたあと、みんなで空を見上げた。
秋の空は高く澄み渡り、雲はゆっくりと流れていく。
柿の木の枝先には、まだいくつか実が残っており、夕陽を浴びて黄金色に輝いていた。
女の子は両手を膝に置きながら、「秋って、のんびりでいいね」とつぶやいた。
ベルは「いっぱい食べて走りたくなる季節だな!」と胸を張り、
チャイは「お腹いっぱいで眠くなっちゃった」とごろんと横になる。
モカは「食後は昼寝が一番よ」とチャイの隣に丸まり、
リクは「今日の収穫を感謝しよう」と低く言った。
ユキは風に揺れる枝を見つめ、「また来年も、この木は実をつけるだろう」と静かに未来を思った。
夕陽が赤く空を染め、みんなの影を長く伸ばしていく。
柿の木の下で過ごした時間は、あたたかく心に残る秋の思い出となった。
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