第121話 「渡り鳥の休息」
---
### 1 風にのってやってきた影
秋も深まり、朝の空気は少し冷たくなってきた。
病院の庭に出た女の子は、空を見上げて「わぁ!」と声をあげた。
高い空を、白い腹と黒い翼を持った鳥たちが群れになって飛んでいた。
「渡り鳥だ!」
ベルは空に向かって吠え、チャイは「すごーい!」と跳ね回る。
モカは「毎年ちゃんとやって来るのね」と目を細め、リクは「季節を渡る力、見事なものだ」と低く言った。
ユキは屋根の上に跳び上がり、鋭い目で鳥たちの隊列を追った。
そのうち数羽が列を離れ、病院の庭の大きなイチョウの枝に降り立った。
---
### 2 疲れた旅人
木にとまった渡り鳥たちは、羽を膨らませ、しばらくじっとしていた。
長い旅の途中で、羽を休めに来たのだろう。
女の子は「大丈夫かな……?」と心配そうに覗き込む。
ベルはそっと近寄り、匂いを嗅ごうとしたが、鳥たちは羽をばたつかせて警戒した。
「だめだよ、びっくりさせちゃ」女の子はベルをなだめる。
チャイは「ぼく、お水持ってくる!」と駆け出し、
モカは「優しくしてあげなくちゃ」と静かに言った。
リクは「旅は命がけだ。休息が必要だ」とうなずき、ユキは「この庭は安全だ」と屋根の上から告げた。
女の子は小さなお皿に水を入れて木の根元に置いた。
一羽の鳥が恐る恐る降りてきて、水を口にした。
---
### 3 小さな交流
渡り鳥たちが次々と降りてくると、庭はにぎやかになった。
羽を広げて日なたに立つ鳥、羽繕いをする鳥、仲間同士で鳴き交わす鳥。
女の子は「お客さんみたいだね」と嬉しそうに笑う。
ベルはしっぽを振りながら見守り、チャイは「友だちになれるかな」とそわそわしている。
モカは「静かに見守るのがいちばんよ」と釘を刺し、
リクは「自然がここを選んでくれた。それが誇らしい」と胸を張った。
ユキは「彼らの声は空を渡る歌だ」と耳を澄ませた。
鳥たちの鳴き声は、秋の澄んだ空気に溶け込んで、まるで音楽のように響いていた。
---
### 4 去りゆく時
やがて、太陽が傾き始めた。
渡り鳥たちは羽を整え、空を仰ぐ。
女の子は「もう行っちゃうのかな」と少し寂しそうに呟く。
ベルは「また来るよ!」と元気に吠え、チャイは「がんばってね!」と小さな声で声援を送る。
モカは「無事に目的地まで行けるといいわね」と優しく言い、
リクは「大いなる旅路だ。彼らは必ずやり遂げる」と力強くうなずいた。
ユキは「別れは終わりではない。また巡り会える」と静かに告げた。
一斉に羽ばたいた鳥たちは、夕焼け空に大きな隊列を作り、南へ向かって飛び去っていった。
---
### 5 残されたもの
鳥たちが去った後、庭には小さな羽が数枚だけ落ちていた。
女の子はそれをそっと拾い、「思い出のお守りにしよう」と微笑んだ。
ベルとチャイは名残惜しそうに空を見上げ、モカは「また来年が楽しみね」と尻尾を揺らした。
リクは「我らもまた季節を越えていく」と言い、ユキは夕闇の空を仰ぎながら「秋の旅はまだ続く」と呟いた。
病院の庭に訪れた渡り鳥たちのひとときは、確かに季節の彩りを残していった。
---




