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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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第117話 「夏の終わりの夕暮れ」



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### 1 静かな夕暮れ


八月も終わりに近づくと、病院の前の道にも、少しずつ秋の気配が混じりはじめる。

夕暮れの空は茜色に染まり、雲の端が金色に光っていた。


「日が暮れるの、早くなったね」

縁側に腰かけた女の子がぽつりと言う。


ベルはその足元に寄り添い、チャイは草むらの中でまだ鳴いている蝉をじっと見つめている。

モカは窓辺で毛づくろいをしながら「うるさいと思ってた蝉も、いなくなると少し寂しいわね」と小さく呟いた。

リクは深く息を吸い、「夏の匂いと秋の匂いがまじっている」と目を閉じる。

ユキは屋根の上で、空が赤から紫に変わっていくのを黙って見守っていた。


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### 2 思い出話


女の子は、両手を膝に置いてみんなに向き直った。

「夏はいろんなことがあったね。夕立も、お祭りも、花火も……」


ベルはうれしそうに「わん!」と応え、チャイは「金魚すくい楽しかった!」と跳ねる。

モカは「私はわたあめでベタベタになったチャイを忘れない」と笑い、チャイが「だっておいしかったんだもん」とむくれた。


リクはゆっくりと頷き、「あの夜の花火は、胸に残る」と低く言った。

ユキは「提灯の灯りが、星と並んで見えた」と思い出すように目を細める。


みんなの声が重なり、縁側は賑やかになった。

けれど、その声の奥に、少しずつ過ぎゆく夏への名残惜しさがにじんでいた。


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### 3 夕風とひぐらし


風が涼しくなり、どこからかひぐらしの声が響いてきた。

「カナカナカナ……」とせつなく鳴く声に、女の子は耳を澄ます。


「この声、ちょっとさみしいね」

女の子が呟くと、ベルが首をかしげ、チャイは耳をぴんと立てて聞き入った。

モカは「でも、これも季節のうつろいよ」と落ち着いた声を出し、リクは「自然の歌は、いつも次を教えてくれる」と言った。


ユキは空を見上げて、「あの光もすぐに秋の星座に変わる」とつぶやいた。


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### 4 夕暮れの遊び


女の子は少し元気を出そうと、「みんなで追いかけっこしよう!」と立ち上がった。

ベルとチャイは大喜びで走り出し、モカは「もう子どもなんだから」と言いながらもしっぽを立ててついていく。

リクはゆったりとした歩幅で走り、ユキは屋根の上からその様子を眺めながら軽やかに飛び移った。


夕暮れの空の下、みんなの影が長く伸びて、縁側の前に楽しい模様を描いた。

笑い声と足音が響き、ひぐらしの声と混ざって夕暮れの空気を満たした。


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### 5 夜のはじまり


遊び疲れて縁側に戻ると、空は群青色に変わり、最初の星が瞬き始めていた。

女の子は「もう秋が来るんだね」とつぶやき、膝にベルとチャイを抱き寄せる。


モカはその横で体を丸め、リクは落ち着いた声で「どんな季節もここで過ごせる」と言った。

ユキは屋根から見下ろし、「夏が終わるからこそ、また次の楽しみが来る」と静かに付け加える。


夜風は柔らかく、病院の灯りが窓からあたたかく漏れていた。

夏の終わりの夕暮れは、さみしさと同時に、確かに次の季節の予感を運んできていた。


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### 6 眠りへ


布団に入った女の子は、窓の外の虫の声に耳を傾けながら目を閉じる。

「またみんなでいっぱい思い出つくろうね」


ベルとチャイはその両脇で眠り、モカは窓辺で星を見上げた。

リクは静かにまぶたを閉じ、ユキは屋根の上で夜風を浴びながら見張りを続ける。


こうして夏の終わりの一日は、やわらかな静けさとともに幕を下ろした。


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