第116話 「夏祭りの灯り」
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### 1 お祭りの知らせ
夏の夜、病院の待合室の窓から外を眺めていた女の子が、うれしそうに声をあげた。
「ねえ! 今日は町のお祭りだって!」
通りには色とりどりの提灯が吊るされていて、風に揺れる明かりがぽつぽつと点っている。
遠くからは太鼓や笛の音が聞こえ、すでに夏祭りの賑やかな雰囲気が伝わってきていた。
ベルは尻尾をぱたぱたと振り、チャイは飛び跳ねて「行きたい! 行きたい!」と騒ぐ。
モカは「人がいっぱいなのはちょっと……」と渋い顔をしたが、結局ついていくことに。
リクはゆったりと歩きながら「祭りのにぎわいもまた季節の匂い」と静かに言い、ユキは高い塀の上から「夜風もいい。案内してやろう」と先に行く。
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### 2 提灯の道
町に出ると、両側に屋台が並び、提灯の赤や橙の光が揺れていた。
女の子は目を輝かせてあちこちを見回し、ベルとチャイは人々の間をぬうように走り回る。
「わたあめ! りんごあめ!」
女の子が声をあげると、チャイも「甘いの! 欲しい!」と大はしゃぎ。
モカは「どうせ顔じゅうベタベタになるんでしょ」とため息をつきながらも、どこか楽しそうにしていた。
リクは屋台の匂いに鼻を動かし、「焼きそばの香ばしさ……これもまた祭りの味」と呟く。
ユキは人混みを避けて屋根伝いに進み、上から「こっちに道が空いているぞ」と声をかける。
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### 3 金魚すくい
女の子は金魚すくいの屋台に立ち寄った。
小さな水槽の中を赤や金色の金魚がきらきら泳ぎ、屋台の灯りに照らされて宝石のように見える。
「きれい……!」
女の子はポイを受け取って水面をじっと見つめた。
ベルは水槽を覗き込み、鼻先で水をはじいてしまい「わん!」と驚く。
チャイは前足を突っ込みそうになり、慌てて女の子に止められる。
モカは後ろでしっぽを揺らしながら、「ほら、もう破れそうよ」と冷静に指摘。
それでも女の子は慎重にポイを動かし、見事に一匹すくい上げた。
「やったー!」
その声に、ベルもチャイも一緒になって喜んだ。
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### 4 夜店めぐり
わたあめを頬張り、焼きそばをつつき、射的や輪投げにも挑戦。
女の子が景品を外してがっかりすると、ベルが「わん!」と吠えて盛り上げ、チャイが小さな鈴の指輪を当てて大はしゃぎ。
モカはやや呆れ顔で「賑やかすぎるわね」と言いつつ、屋台の下に座って涼んでいた。
リクは冷えたラムネを瓶ごと抱え、「昔から変わらぬ味だ」としみじみ。
ユキは高い場所から屋台の灯りを眺め、「提灯の光は星のようだ」とつぶやいた。
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### 5 花火の夜
やがて、空に大きな音が響いた。
「どーん!」
夜空に花火が開き、光の花びらが広がった。
女の子は「きれい!」と声を上げ、ベルとチャイは驚きながらも目を輝かせた。
モカは耳をふさぎつつ、「うるさいけど……悪くない景色ね」と笑う。
リクは夜空を見上げて、「一瞬の輝きだからこそ美しい」と呟き、ユキは屋根の上で花火の音に耳を澄ませていた。
いくつもの花火が夜空を彩り、提灯の灯りと合わさって町は幻想的な光に包まれた。
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### 6 帰り道
花火が終わり、屋台の灯りもひとつずつ消えていく。
女の子は手に小さな金魚鉢を抱え、満ち足りた顔で歩いていた。
ベルは横でとことこ歩き、チャイは鈴の指輪を首にかけて得意げ。
モカは疲れた様子であくびをし、リクは「今夜の思い出は心に残る」としみじみ言う。
ユキは最後まで屋根の上から見守り、涼しい夜風に毛をなびかせていた。
こうして病院に戻ると、みんなぐっすりと眠りについた。
祭りのにぎわいと灯りの余韻を胸に抱きながら――。
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