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動物病院日誌   作者: 匿名希望


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115/146

第115話 「夏の夜風」


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### 1 夕立のあと


昼間に降った夕立のおかげで、夜になった町はすこし涼しくなっていた。

動物病院の窓を開けると、しっとりと湿った風が流れ込み、蒸し暑さを和らげてくれる。


「気持ちいい風……」

女の子は縁側に腰を下ろして、頬に当たる夜風を楽しんだ。


ベルはその隣に座って大きく伸びをし、チャイは草むらから聞こえてくる虫の声に耳をぴくぴく。

モカは縁側に横たわりながらしっぽを揺らし、「やっと落ち着いたわね」と小さく呟く。

リクは静かに鼻先を夜風に向けて深呼吸し、ユキは屋根の上からみんなを見守るように座っていた。


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### 2 夜の音楽


あたりはすっかり暗く、街灯の明かりが点々と灯る。

遠くからは蛙の合唱、近くの草むらからはコオロギや鈴虫の音が響いてくる。


「なんだか歌みたい」

女の子がそう言うと、ベルは「ぼくも歌えるよ!」とわん、とひと声。

チャイは負けじと鳴き、モカは耳を押さえて「静けさの方がいいのに」と笑った。


リクは目を細めて、「自然の音は、心を落ち着ける」と低く言う。

ユキは夜空を見上げ、「星々も加わっているな」と小さく呟いた。


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### 3 星空の下


雲が流れていき、夜空には星が次々と姿を現した。

女の子は指を伸ばし、「あれが一番大きな星!」と得意げに見つける。


ベルとチャイは首をかしげて見上げ、モカは「私には全部同じに見えるけど」とあくびをする。

リクは「北の空を見ろ。あの並びは昔から道しるべだった」と語り、ユキはしなやかに屋根を歩きながら、「星はいつも静かに見守っている」と呟いた。


「みんなと一緒に見るから、もっときれいに見えるんだね」

女の子の言葉に、ベルは嬉しそうに尻尾を振った。


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### 4 夜風と団らん


縁側に用意した麦茶と冷たいスイカを、みんなで少しずつ分け合う。

女の子は甘い果汁を頬張り、ベルは種を器用に避けてぺろり。

チャイは手を突っ込みすぎて顔をびしょぬれにし、モカが「もう子どもなんだから」と世話を焼く。


リクは控えめにひと口味わい、「夏の恵みだな」と静かに感想を述べ、ユキは屋根から降りてきて小さくひと舐め。

「冷たいけど……悪くない」

その一言にみんなが笑った。


夜風が通り抜け、ランタンの灯りがやさしく揺れる。

そこには特別なことは何もないけれど、かけがえのないひとときが流れていた。


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### 5 眠りへ


やがて夜も更け、虫の声がさらに静かに響き始めた。

女の子は縁側でうとうとし、ベルとチャイは寄り添って眠りにつく。

モカはその上にしっぽをかけて毛づくろいしながら目を閉じ、リクは守るように近くで横になる。


ユキは屋根に戻り、涼しい夜風を受けながら月を見上げていた。

「この風が、明日もみんなを包んでくれますように」

その声は誰にも届かないほど小さかったが、きっと星空には届いていた。


こうして夏の夜は、やさしい風と共に静かに更けていった。


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