「七夕の夜」
1 笹の葉と願いごと
七月の初め。
商店街の入り口に、大きな笹が飾られていた。色とりどりの短冊や折り紙の飾りが風に揺れて、涼しげな音を立てている。
「きれい!」
女の子は思わず声をあげて、笹に駆け寄った。
ベルとチャイもその下で尻尾を振り、モカは短冊をじっと見上げる。
リクはゆっくり近づいて、「いろんな願いがあるんだな」とつぶやき、ユキは高い枝に結ばれた星の折り紙に目を細めた。
美咲は小さな笹の枝をもらい、病院に持ち帰った。
「せっかくだから、みんなで飾ろうね」
その言葉に、女の子も動物たちも目を輝かせた。
2 短冊を書く
夕方、病院の待合室の一角に笹を立てて、机の上に短冊とペンを広げた。
「願いごと、なんて書こうかな」
女の子は首をかしげてから、「ずっとみんなといられますように」と書いて、ベルの首輪に見せる。
ベルは嬉しそうにしっぽを振り、チャイは「ぼくはおやついっぱい!」と声をあげるように紙にじゃれた。
美咲が「じゃあ私が書いてあげる」と、チャイの願いも短冊にした。
モカは少し悩んでから「もっと静かに昼寝ができますように」と書かれ、リクは「みんなが元気で過ごせますように」と真面目な願いになった。
ユキは短冊を前にしてしばらく黙っていたが、やがて「屋根の上から星をずっと眺められますように」と小さく書かれた。
3 星の待ち時間
夜、庭にシートを広げて、みんなで寝転んだ。
「星、見えるかな」
女の子は空を見上げるが、まだ薄い雲が残っていた。
ベルとチャイは退屈そうにころころ転がり、モカは「待つのもいいものよ」と目を閉じた。
リクは空をじっと見つめ、ユキは屋根の上に上って静かに夜を待った。
やがて雲が切れ、ひとつ、ふたつと星が顔を出した。
女の子が「わぁ!」と声をあげると、ベルもチャイも一緒に空を見上げた。
4 天の川
やがて、夜空に白い帯が広がった。
「これが天の川!」
女の子が両手を広げると、ベルとチャイも嬉しそうに吠えた。
モカは「ほんとに川みたいね」と感心し、リクは「星が集まってできた光の道だ」と説明した。
ユキは屋根の上から「織姫と彦星も、今夜は会えるんだろう」とつぶやいた。
美咲はにっこり笑って、「みんなの願いも届くといいね」と言った。
その言葉に、女の子は胸に手を当てて「ずっと一緒にいられますように」ともう一度願った。
5 夜風の中で
風が少し冷たくなり、笹の葉がさやさやと鳴った。
そこに結ばれた短冊も揺れて、星明かりを受けてきらめいていた。
ベルはチャイに寄り添い、モカはシートの端で丸くなる。
リクは横になったまま空を見つめ、ユキは高い場所からみんなを見守っていた。
病院の庭に広がる七夕の夜は、静かで、そしてとても温かかった。




