「つつじの道」
1 花の道へ
五月の半ば。動物病院の庭にも新しい季節の匂いが漂いはじめた。
風はやわらかく、日差しはすっかり初夏の色を帯びている。
「今日はつつじがきれいに咲いてるはずだよ」
美咲がそう言うと、女の子の目がぱっと輝いた。
ベルはしっぽを振り、チャイは「お花ってなあに?」と首をかしげる。
モカは「きっと派手な花よ」と落ち着いた声で答え、リクは静かに玄関へ歩いていった。
ユキは窓辺から外を眺め、「花の道、楽しみだ」と小さくつぶやいた。
みんなで連れ立ち、病院の近くにある公園の小道へ向かった。
2 赤と白と紫
公園の入口を抜けると、両脇につつじが咲き誇っていた。
赤、白、紫、ピンク……その鮮やかさはまるで絵の具を並べたようだ。
「わぁ!お花のトンネル!」
女の子が声を上げると、ベルとチャイは花の間に鼻を突っ込んでクンクン。
モカは「花粉がつくからやめなさい」と注意しながらもどこか嬉しそう。
リクはゆっくりと花の香りを嗅ぎ、ユキは枝の上から見下ろして「まるで絨毯だね」とつぶやいた。
風が吹くたび、花びらがひらひらと舞い、小道に色を添える。
3 つつじの蜜
女の子が立ち止まり、花をのぞきこんだ。
「おばあちゃんがね、つつじのお花は甘いって言ってたよ」
試しに一枚の花びらをそっと舐めると、ほんのり甘い味がした。
「ほんとだ!」
女の子は笑顔になり、ベルも真似しようと顔を近づける。
「ダメよ、ワンちゃんは食べちゃダメ!」
美咲が慌てて止めると、モカが「ほら見なさい!」と胸を張った。
チャイは残念そうにしょんぼりし、リクは静かに首を振った。
ユキは枝から「人間だけの秘密の味だね」と笑っていた。
4 花のトンネルを抜けて
つつじの道は、どこまでも鮮やかに続いていた。
ベルとチャイは走りながら、花びらを追いかける。
女の子は「待ってー!」と笑いながら駆けていく。
モカは「本当に落ち着きがないわ」と言いながらも足取りが軽い。
リクはその後ろ姿を見守りながら、のんびりと歩いた。
ユキは時折花の影に身を隠し、みんなを驚かせては楽しんでいた。
小道の先にはベンチがあり、つつじの花に囲まれた特等席のようだった。
5 つつじのベンチ
「ここで休もうか」
美咲が声をかけ、みんなで腰を下ろす。
女の子は花びらを集めて手のひらにのせ、「お花のケーキ!」と笑う。
ベルとチャイはその横で仲良く寄り添い、モカは「崩れるから動かさないで」と真剣な顔。
リクは大きく息を吸い込み、花の香りを胸いっぱいにため込む。
ユキはベンチの背もたれに飛び乗り、花越しに見える青空を眺めていた。
風が通り抜け、花びらがふわりと舞って、みんなの肩や髪にそっと積もった。
6 帰り道
夕方が近づくと、花の色が少しずつ柔らかく見えてきた。
「今日のお散歩、楽しかったね」
女の子がつぶやくと、ベルが「わん!」と答え、チャイも元気に跳ねた。
モカは「たまには華やかな道も悪くないわね」と微笑み、リクは静かに頷いた。
ユキは最後にもう一度振り返り、「また花の道を歩こう」と言った。
つつじの小道は、みんなに色と香りの思い出を残してくれた。




