「新緑の公園」
1 初夏の気配
四月の終わり、風の中に少しだけ夏の匂いが混じるようになった。
病院の庭の木々はすっかり若葉を茂らせ、濃い緑へと変わりつつある。
「今日は公園に行ってみようか」
美咲がそう声をかけると、女の子は大喜びで「やった!」と飛び跳ねた。
ベルはすぐにリードをくわえて玄関で待ち、チャイは足元をぐるぐる回る。
モカは「またはしゃぐわね」とため息をつき、リクは落ち着いて女の子の隣に座った。
ユキは窓辺から外を眺め、もう緑の風景を思い描いているように目を細めていた。
2 緑のトンネル
公園の並木道は、桜の花が散ったあと、すっかり濃い緑に覆われていた。
枝から枝へと葉が重なり合い、道の上に涼やかなトンネルを作っている。
女の子は「みどりのトンネルだ!」と声をあげ、ベルとチャイと一緒に駆け出した。
モカは心配そうに小走りでついていき、リクは一定の速度でゆったりと進む。
ユキは低い塀からひょいと飛び乗り、枝の間を渡りながら上から道を眺めた。
風が吹くと、葉っぱが一斉に揺れ、さわさわと涼しい音を響かせた。
3 広場でひと休み
並木道を抜けると、広い芝生広場に出た。
緑のじゅうたんのように芝が広がり、ところどころに木陰が落ちている。
「ここでお昼にしよっか」
美咲がシートを広げると、ベルとチャイはもう走り回っていた。
モカは「まず座りなさい!」と鳴きながら女の子の隣に腰を下ろし、リクは静かに木陰に座った。
ユキは木に登り、枝の上からみんなを見下ろしていた。
お弁当は色とりどりのサンドイッチと果物。
女の子は「ピクニックだね!」とにっこり笑い、みんなで分け合いながら春の昼を楽しんだ。
4 緑と遊ぶ
昼食のあと、ベルとチャイは芝生を思い切り走り回った。
女の子も一緒にボールを投げ、ベルは見事にキャッチ。
チャイは空振りして転がり、みんなの笑いを誘った。
モカは「見てられない」と言いながらも楽しそうに目を細め、リクはゆっくりと広場を一周しながら風を感じていた。
ユキは枝から飛び降りて芝生に転がり、太陽の光を浴びながらのびをした。
新緑の中で遊ぶと、時間がゆっくりと流れていくようだった。
5 池のまわり
公園の奥にある池のまわりも散策した。
水面には木々の緑が映り込み、鳥たちが気持ちよさそうに泳いでいた。
女の子は「みどりがうつってる!」と指さし、ベルとチャイは鳥を追いかけそうになって美咲に止められる。
モカは「危ないから!」と必死に鳴き、リクは静かに水面を見守った。
ユキは石の上に飛び乗り、水面に映る自分をじっと見つめていた。
風にそよぐ若葉の影が水面に揺れ、緑と青の模様を描いていた。
6 夕暮れの公園
夕陽が沈みかけるころ、公園の緑は黄金色に染まった。
葉の隙間から光が差し込み、芝生がきらきらと輝く。
「きれい……」
女の子がぽつりと言い、美咲も「春から夏への色だね」と答えた。
ベルとチャイは遊び疲れて女の子に寄り添い、モカは大きなあくびをした。
リクは背筋を伸ばして最後まで景色を見守り、ユキは高い枝の上からゆったりと夕陽を眺めていた。
新緑の季節は、みんなに静かな元気をくれる時間だった。




