40.療養後の再会
療養所に導入されたガウン式の服は、すぐに兵士たちの間で評判になった。
「袖を通さなくていいから痛くない!」
「寝たままでも着替えられるぞ!」
そんな声が広がり、やがて看病していた仲間たちからも感謝の言葉が寄せられる。
「お嬢様……これは私たちの手間も減らしてくれました。
怪我人を動かさずに済む、それだけでどれほど楽になったか……」
その言葉を聞いたコリィは胸に手を当て、そっと笑った。
(……小夜の頃は“迷惑をかけてごめんね”しか言えなかった。
でも今は……“ありがとう”って言ってもらえるんだ……)
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数か月後。
ヴォルクハイト領の広場では、冬の終わりを告げる祭りが開かれていた。
屋台からは温泉卵や苺ヤギミルクの香りが漂い、領民たちの笑い声が響く。
その中でコリィは、ふと見覚えのある顔を見つけた。
あの日、袖を通せずに苦しんでいた兵士だ。
今は健康そうに鎧を着こなし、笑顔で仲間たちと歩いていた。
「……あっ!」
思わず声を上げると、兵士も気づき、目を丸くした。
「コルネリア様……!」
彼は人混みをかき分けて駆け寄り、胸に手を当てて深々と頭を下げた。
「本当に……ありがとうございました! お嬢様のおかげで療養が楽になり、こうしてまた剣を握れるようになりました!」
その声に周囲の兵士たちも集まり、口々に言った。
「着替えの度に苦しんでいた仲間が笑顔を取り戻したんです」
「看病する側も助かりました。本当に、感謝しています!」
コリィは驚きで目を瞬かせたあと、にっこりと微笑んだ。
「えへへ……みんなが元気になってくれて、こうしてまた会えるなんて……わたしの方こそ嬉しいです」
アマーリエが隣で微笑み、ジークは大声で笑った。
「ほらな! コリィはただ可愛いだけじゃないんだ。領の誇りなんだぞ!」
兵士たちは顔を赤らめながらも頷き合い、再び深々と頭を下げた。
その時、夜空に光の魔法で描かれた鳥が舞い上がり、祭りの空に花のような光が降り注ぐ。
「おおおっ!」と沸き立つ声の中で、コリィは胸に手を当て、静かに思った。
(……わたしは、もう病気の小夜じゃない。
みんなと笑って、生きて、支え合っていけるんだ……)
彼女の頬には、暖炉の火のようにあたたかな笑みが浮かんでいた。




