4.実はね、
周り全体から守られ、3歳になったコリィは、ますます屋敷の人々を驚かせていた。
落ち着いた言葉づかいで大人顔負けの会話をし、ときに子供らしい笑顔を浮かべては皆を魅了している。
ある夜、暖炉の炎がぱちぱちと音を立てる中。
家族が団らんしていると、コリィは母の膝にちょこんと座り、少しだけ恥ずかしそうに口を開いた。
「……あのね。わたし、覚えてることがあるんです」
父「覚えている?」
母「なにをかしら、コルネリア?」
コリィはもじもじと指を重ね合わせ、それでも楽しそうに笑みを浮かべながら言った。
「……わたし、前の世界では“小夜”って名前でした。ずっと体が弱くて、病院のベッドにいたんですけど……でも、江戸っていう昔の時代が大好きで。本とか映像で、よく見てたんです」
兄ジーク「エド…?」
姉アマーリエ「やっぱり、ただの子供じゃないとは思っていたけれど……」
コリィは、瞳を輝かせて続けた。
「水路があって、お風呂があって、お祭りでみんな笑ってて……わたしも、ああいう世界に行けたらいいなぁって。そう思ってたんです!」
その表情は、どこか照れているのに、心から嬉しそう。
父はゆっくりと頷き、笑みを浮かべた。
「なるほど……だからお前は、あのように賢いのだな」
母は優しく抱きしめ、額に口づけした。
「小夜でも、コルネリアでも……どちらでもいいのよ。あなたは、私たちの大切な娘。それだけは変わらないわ」
コリィはきゅっと目を閉じ、頬を赤らめながらも「はい……」と答える。
「わたし、今はとっても幸せです!」
家族も使用人も、その笑顔に胸を温められた。
―この子を守ろう。
―この子の笑顔こそ宝だ。
屋敷全体に、そんな想いが自然と広がっていった。