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転生令嬢コリィは江戸文化に憧れる〜辺境スローライフ〜  作者: ちょこだいふく


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36/40

36.料理長の決意

ホットチョコの衝撃から数日後。

厨房では料理長が、真剣な顔でカカオ豆を手にしていた。


「……お嬢様は“前世では病気で甘いものをほとんど食べられなかった”と仰ったな」

その言葉を思い出し、拳をぎゅっと握る。


「……ならばこの手で、お嬢様の知らないほどの菓子を作ってみせる!」


料理長はカカオ豆を焙煎し、粉にし、砂糖やバターを加え……だが、出来上がったのは苦くてざらついた塊だった。

「ぐっ……これではダメか……」


そこへアマーリエが現れる。

「温度を管理すれば、もっと滑らかになるかもしれないわ」

彼女は設計図を取り出し、温度計の代わりに魔力で温度を一定に保つ器具を考案する。


ジークも腕を組みながらにやりと笑う。

「よし、力仕事は俺に任せろ! 豆を砕くくらいならいくらでもやってやる!」


母は優しく微笑みながら言った。

「コリィを喜ばせたい……みんな同じ気持ちなのね」


ーーー



数日間、厨房からは香ばしい香りと、失敗の声が響き続けた。

「うぐっ!舌触りが…ざらざらしてる!」

「温度をもっと下げろ、今度は上げすぎた!」

「でも香りは良くなってきたわ!」


ついに完成したのは――まだ板チョコには程遠いけれど、

パンに塗れるチョコペーストと、果物にかけられるチョコソースだった。


ーーーー


ある日、食堂に呼ばれたコリィ。

テーブルの上には、苺にチョコをかけた皿と、パンに塗ったチョコペーストが並んでいた。


「……これは?」

首をかしげるコリィに、料理長が誇らしげに頭を下げる。

「お嬢様のために、新しい菓子を作ってみました」


「えっ……わたしのために……?」


アマーリエも胸を張って言う。

「コリィの話を聞いて、どうしても作りたくなったの。あなたが食べたかった“前世のお菓子”を」


ジークもにやにやしながら。

「お前を驚かせたくてな」


恐る恐る口にしたコリィの目から、涙が溢れた。

「……美味しい……こんなの、こんなに美味しいもの…初めて食べるわ……」


母がそっと肩を抱きしめ、父が穏やかに頷いた。

「これからは、ここでいくらでも食べられる。

ヴォルクハイトは……お前の幸せのためにあるのだから」


コリィは涙と笑顔を浮かべ、両手でカップを抱きしめた。

「えへへ……本当に、幸せです」


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