34.お祭り
冬の夜。
ヴォルクハイト領の広場には灯りが並び、湯屋の湯気と雪の冷気が混じって幻想的な雰囲気に包まれていた。
「さぁ、祭りの始まりだ!」
父の声と共に、領民たちの歓声が広がる。
ーーーー
屋台には次々と料理が並んでいく。
「いちごヤギミルクだ! 見てみろ、この可愛い色!」
「ぷるぷるしてるぞ……これは“ぷりん”っていうんだって!」
「温泉で作った卵だと!? とろけるような味だ!」
「蒸したお肉がふっくら柔らかいぞ!」
領民たちは次々に口にし、目を見開いた。
「甘い!」「なんだこの食感は!」「まるで別世界の味だ!」
遠方から来た商人たちも、驚愕の表情でつぶやく。
「……ただの辺境ではない……これは新しい文化だ」
「これを都に持ち帰れば、必ず大評判になるぞ……!」
ーーー
祭りの盛り上がりが最高潮に達したころ、コリィが広場の中央に立った。
「みなさん……今日は来てくださってありがとうございます!
最後に、ちょっとした余興をお見せしますね」
小さな手を胸に当て、コリィは目を閉じる。
その瞬間、夜空に柔らかな光が浮かび上がった。
鳥が羽ばたき、魚が泳ぎ、光の群れがふわふわと宙を舞う。
「わぁぁぁ!」
「すごい……! 本物みたい!」
ジークが驚きながら笑う。
「こりゃすげぇ、コリィ!」
アマーリエも頷き、目を輝かせた。
「映像を描く魔法なんて……初めて見たわ」
さらに、コリィが指を弾くと――
「ぱんっ!」と音がして、光の鳥が的のように弾け、花びらや雪の結晶のようなエフェクトが舞い散った。
「当たった!」「見て! 花が降ってきた!」
領民たちは棒を手に、まるで射的のように光の鳥や魚を狙い、命中させるときらめきが広がる。
子どもたちがきゃあきゃあと笑い、老人たちも目を細めて手を叩く。
母は胸に手を当てて微笑み、父は静かに呟いた。
「……こんな素晴らしい光栄に立ち会えるなんてな…」
ーーーー
笑い声と歓声が雪夜に響き渡り、広場は煌めく光と笑顔で満ちた。
コリィは両手を広げ、頬を赤らめながら言った。
「……みんなが笑ってくれて、本当に嬉しいです」
湯気と光に包まれた祭りは、領民と旅人の心に深く刻まれた。
こうして、ヴォルクハイト領の“冬の祭り”は、この地の新しい風物詩となっていった。




