31.ハウス栽培?
湯屋の建設を見ていたコリィは、湯気の立ち上る床に手を当てて目を輝かせた。
「……床の下を通るお湯で、部屋全体が温まる……これなら冬でも快適に過ごせますね!」
「床を温める……?」
ジークが首をかしげ、アマーリエがすぐに理解したように頷いた。
「なるほど。床下に温泉水を流せば、じんわり熱が伝わるわけね。……でも、領民すべての家にはすぐには無理だから……まずは館や湯屋で試すのが現実的ね」
父も感心したように笑う。
「薪の節約にもなるだろう。いい発想だ」
コリィはうんうんと頷いたあと、ふと思いついて顔を上げた。
「……そうだ! 温泉の熱を使えば……作物も育てられるかもしれません!」
「作物に?」
アマーリエが目を瞬かせる。
「はい。寒い土地でも、温かい小屋を作れば、冬でも果物や野菜が育てられるんです。
ただし、温泉のお湯には成分が含まれているから、直接触れさせると作物が悪くなるかもしれません。
だから床下を通して“熱だけ”を伝えるんです!」
アマーリエの目が輝く。
「……温室! なるほど、木枠と硝子、あるいは油紙で屋根を覆って……床下に温水管を通せば……」
ジークが驚いたように笑う。
「冬に果物だと!? そんな夢みたいなことが……!」
母は嬉しそうに手を合わせる。
「まぁ……領民もきっと大喜びだわ」
コリィは両手を胸に当てて、ほんわかと微笑んだ。
「えへへ……寒い時期でも、美味しい果物や野菜を食べられたら、みんなもっと元気になると思うんです」
こうしてヴォルクハイト領に――
温泉の熱を利用した“温室栽培” という新たな挑戦が芽吹こうとしていた。




