30.蒸気
温泉街の計画が進む中、湯気を見つめていたコリィがぽんと手を打った。
「そうだ! この蒸気を使えば……料理ができるはずなんです!」
「料理に?」
アマーリエが首をかしげる。
「はい。蒸気でゆっくり火を通せば、お肉や野菜がふっくら仕上がりますし…卵を蒸したらとっても美味しいんです。温泉卵って言うんですけど、あと前の世界では“ぷりん”なんてお菓子も作られていたんですよ」
「ぷりん……?」
ジークが怪訝な顔をし、アマーリエも眉をひそめた。
母はくすっと笑って首をかしげる。
「聞いたこともないわねぇ」
「じゃあ、作ってみます!」
コリィは嬉しそうに材料を集めた。
卵と牛乳、少しの砂糖を混ぜて器に注ぎ、温泉の蒸気にかける。
しばらくすると――ぷるん、と揺れる黄金色のプリンが出来上がった。
「……わぁ!」
アマーリエが目を輝かせる。
「見たことないわ…例えようがないけれど、可愛らしくってとっても綺麗な色!」
「では、どうぞ!」
コリィがスプーンを配り、みんなで一口。
――とろりとした舌ざわり、優しい甘みが口いっぱいに広がる。
「!? な、なんだこのなめらかさは!」
ジークが目を剥き、母は両手を胸に当てて感動の声を漏らす。
「……甘くて、やさしい……」
アマーリエも夢中で口に運び、信じられないというように呟いた。
「ぷりん……これが“ぷりん”なのね……!」
「あたたかくても美味しいんですけど、冷やすとそれはもう絶品なんです!」
うっとりとした顔でコリィはいう。
父は真剣な顔で言った。
「……ヴォルクハイト領の宝になる味だ」
みんなの頬が緩み、湯気の中で笑顔が重なる。
コリィは顔を赤らめながらも、にっこりと笑った。
「えへへ……みんなが喜んでくれて、すっごく嬉しいです」
こうして、温泉の恵みから生まれた新たな食文化
特にプリンは、ヴォルクハイト領の名物へと育っていくのだった。




