3.見守り隊
夜、揺りかごの上で小さな光がぽっと灯った。
それを最初に目撃したのは乳母だった。
「…お嬢様が……光を……?」
慌てて声を漏らすと、廊下を通りかかった使用人たちが集まり、目を丸くした。
「まだ言葉もおぼつかないのに……!」
「魔力感知も教えていませんよ!?」
「赤子が独力で魔法を……」
やがて両親と兄姉も駆けつける。
母エレオノーラは驚きつつも、すぐに微笑んだ。
「……まぁ……なんて子なの」
父ラインハルトは腕を組み、しばし沈黙ののちに口を開く。
「騒ぎ立てる必要はない。これは……我らに与えられた奇跡だ」
兄ジークは「すげぇ!」と声を上げかけたが、姉アマーリエに口を押さえられる。
「ジーク、静かに。……コルネリアが驚いてしまうでしょう」
赤子のコリィは、光を前にして「きゃあ、あぶ〜」と無邪気に笑っている。
屋敷の人々は顔を見合わせ、ざわざわと小声で話し合う。
「でも……これを外に漏らせば、利用しようとする輩が……」
「お嬢様の幸せを守ることこそが私たちの役目です」
「……では、皆で口を閉ざしましょう。これはひとまず屋敷の者だけの秘密に」
父がうなずき、静かに告げた。
「そうだな。この子は……この家の光だ。外に見せびらかす必要などない」
母はコリィの額に口づけし、囁く。
「安心して眠りなさい、コルネリア。あなたのことは、私たちみんなで守るわ」
光はやがてふっと消え、コリィは小さな寝息を立て始めた。
その寝顔を見つめながら、家族も使用人たちも思った。
――この子の笑顔こそが、我らの宝。
――だからこそ、ただそっと、見守っていこう。
屋敷全体に、そんな暗黙の了解が広がっていった。