27.温泉を探そう
――数ヶ月後。
ヴォルクハイト領に建てられた湯屋は、連日賑わっていた。
子どもから老人まで列をなし、兵士や職人も仕事終わりに身体を温めに訪れる。
だが、人気が出すぎて浴場は常に満員、順番待ちの列ができるようになっていた。
「ふぅ……嬉しい悲鳴ね」
母が苦笑しながらも嬉しそうに呟く。
コリィは膝の上で手を組み、少し考え込んでいた。
「みんなに喜んでもらえてすごく嬉しいけど……これじゃ数が足りませんね。もっとお風呂があればいいのに」
アマーリエが頷く。
「建て増しはできるけど、それにも限界があるわ」
ジークは腕を組み、首を傾げる。
「お湯を作るのに薪も大量にいるしな……もっと効率よく湯を作れる仕組みがあれば」
その言葉に、コリィはぱっと顔を輝かせた。
「そうだ……“温泉”です!」
「オンセン?」
家族も職人も首をかしげる。
コリィはにっこり笑い、説明を始めた。
「わたしの前の世界には、地面から自然に温かい水が湧き出す場所がありました。温泉って言って、とても気持ちよくて、体にも良いんです。
火山があるなら、この世界にもあるはずです!地面を掘ったくらいで水が出るんですから、探せばきっと……」
父が目を細め、低く唸った。
「地熱……確かに、この辺りには火山地帯があると古い記録にあった」
アマーリエは紙を広げ、山の位置と水脈を書き込んでいく。
「水路や井戸の記録から推測すれば……湧き水の近くや硫黄の匂いがする場所を探せば見つかるはず」
ジークはにやりと笑い、拳を鳴らした。
「よし! なら俺が探しに行ってみよう! 探検は得意だ!」
コリィも立ち上がり、両手を胸に当てて宣言した。
「兄さま、姉さま……一緒に探しましょう!
みんながもっと気持ちよく過ごせるように――今度は温泉を見つけます!」
家族は顔を見合わせ、力強く頷いた。
こうしてヴォルクハイト領は、湯屋の次なる夢――温泉探索へと動き出した。




