25.湯屋建設始動
数日後。
アマーリエの前には大きな羊皮紙が広げられていた。
その上には、広間を二つに分けた浴場、蒸気を逃がす高い天井、排水路や湯釜の位置までもが細かく描かれている。
「……できたわ!」
アマーリエが顔を上げると、家族も職人も兵士も領民も、どっと彼女の周りに集まった。
「ほぉ……大きな湯釜で水を沸かすのか!」
「湯気を逃がす窓まで考えられているぞ」
「排水は下水路に繋ぐのか! なるほど!」
父は図面を掲げ、力強く宣言した。
「ヴォルクハイト領の湯屋建設を、今ここに始める!」
「おおーーっ!」
その声と共に、大工事が始まった。
広場の一角では兵士が土を掘り、職人が丸太を組み上げる。
滑車で大きな梁が吊り上げられ、水路からは掘削機で掘った井戸水が引かれてくる。
「材木はこっちだ!」
「石組みを固めろ!」
「釘を打て!」
領民たちも笑顔で加わり、子どもたちは木材を運びながら歌を口ずさんでいた。
その光景を見守りながら、コリィは毛布にくるまり、ぽかぽかとした笑みを浮かべた。
「……ほんとに、湯屋ができるんだ…本でしか観たことないけど、江戸みたいに、みんなが気持ちよく暮らせるようになる……」
母はそっとその肩を抱き寄せて微笑む。
「ええ、あなたのおかげでね」
父は槌を手に取り、自らも梁を打ち込んだ。
「これは領民すべての願いだ。必ず完成させるぞ!」
雪空に木槌の音が響き渡り――
こうして、ヴォルクハイト領初の公衆浴場建設が本格的に始まったのだった。




