21.ミネラルウォータ
翌日。
アマーリエの設計図を手に、兵士と職人たちが力を合わせて濾過装置を組み上げた。
木枠で囲まれた大きな槽の中に、まず石と砂利、その上に黒い炭、そして一番上に細かな砂が丁寧に敷き詰められていく。
「設計図どおりだ!」
「これなら水がきちんと通るはずだ!」
ジークは腕組みしながら満足げに頷き、アマーリエは細かな寸法を確認して仕上げを指示する。
最後にコリィが小さな魔法陣を描き、出口に清浄のフィルターを重ねた。
「これで……きっと大丈夫です」
父が合図を送り、水を注ぐ。
村人たちは固唾を呑んで見守った。
濁った水が砂に吸い込まれ……炭を通り……石を抜けると、最後に魔法の光をまとって透明な滴となった。
「……出たぞ!」
樋から落ちてきた水は、まるで宝石のように澄みきっていた。
銀の杯に注がれ、父がコリィに差し出す。
「お前が最初に」
コリィは両手で受け取り、そっと口をつけた。
――冷たく、すうっと身体を通り抜ける澄んだ味。
「……! ミネラルウォーターだ!」
思わず叫んだコリィに、周りは首を傾げる。
「みねらる……?」
コリィは照れ笑いしながら頷いた。
「とっても美味しくて、体に良い水のことです!」
母が次に口をつけ、涙を浮かべた。
「……綺麗で、安心して飲める水……とても美味しいわ…」
やがて村人たちも一人、また一人と杯を手に取り――
「こんな水、生まれて初めてだ……!」
「これで子どもが病気になる心配が減る……」
とうとう嗚咽をこらえきれず、涙を流す者まで現れた。
ジークは涙を拭いながら照れ隠しに笑う。
「泣くなよ!でも……正直俺も泣きそうだ」
アマーリエは誇らしげに図面を抱きしめ、コリィの肩を優しく抱いた。
「……あなたの知恵があったから、私は形にできたの」
父は大きく宣言した。
「今日から――ヴォルクハイト領に等しく清らかな水が流れる!これは新たな時代の始まりだ!」
歓声と涙に包まれ、雪空の下で人々は肩を抱き合った。
コリィは胸に手を当て、微笑んだ。
「……生きててよかった。本当に、幸せです」
透明な水がきらきらと光りながら流れ落ち、その瞬間から領地の未来を照らしていた。




