18.とりあえず次は
ため池の横で、処理した肥料が袋にまとめられていく。
ジークが袋を担ぎ上げ、畑へと運びながら声を張った。
「よし! こいつを畑に撒いてみよう!」
村人たちも次々と畑に出て、処理した肥料を土に混ぜ込んでいく。
「本当に効くのか……?」
「いや、お嬢様の知恵だ。必ず実を結ぶさ」
そんな声が飛び交い、みんなの期待と不安が入り混じった空気が広がった。
アマーリエが冷静にまとめる。
「……でも、肥料の効果が目に見えるのは、早くても数週間先ね」
「だな」とジークも頷く。
「今すぐに答えは出ねぇ」
皆が少し静かになったところで、コリィが口を開いた。
「……だから、その間にもうひとつ大切なことを考えませんか?」
父が眉を上げる。
「もうひとつ?」
コリィは真剣な目で言った。
「はい。生活用水だけでなく、“飲み水の安定供給”です。
畑や洗い物に使う水と、人が飲む水は分けた方が安全です。井戸の水や湖の水は季節で変わるから……きちんと確保しなければなりません」
母が小さく息を呑む。
「確かに……病を防ぐには清潔な飲み水が欠かせないわ」
村人たちもざわついた。
「川の水をそのまま飲むと腹を壊すことがある……」
「雪解けの時期は時に濁るからな」
アマーリエはすぐに紙を広げ、さらさらと書き出した。
「分水路を作って沈殿させる場所を作る……濾過用に砂や石を重ねて……」
ジークがにやりと笑う。
「いいな! 上水・下水に続いて、飲み水専用の“清水路”だ!」
父は大きく頷き、力強く宣言した。
「よし。肥料の成果を待つ間に、“飲み水の道”を整える! ヴォルクハイト領は必ず清潔と豊かさを手に入れる!」




