16.汚水処理もしよう
歓声の余韻が残る中、コリィは少しだけ真剣な顔で続けた。
「……下水路は、ただ流すだけじゃ足りません。汚れた水には泥や食べ物のかすが混ざっていて、そのまま川に流すと水も土も汚れてしまいます」
「なるほど……」と父が腕を組む。
「だから――一度“ため池”のような場所に集めて、かき混ぜるんです。そうすると、重いものは下に沈みます」
コリィは小石を手に取り、水桶に落として見せた。
「こうやって沈んだものをすくえば、それが畑の肥料になります。軽い水だけを流してやれば、川や湖を汚さずに済むんです」
村人や職人たちは目を見張った。
「汚水が……肥料に?」
「そんなことが……!」
アマーリエはすぐに羊皮紙を広げ、さらさらと描き始めた。
「……じゃあ、下水路をこの池に集めて……中を羽根のような板で撹拌して……」
「撹拌には水車を応用できるわね。流れの力で羽根を回せば、自然にかき混ぜられるはず」
「なるほど!」とジークが身を乗り出す。
「じゃあ力仕事もいらねぇな!」
父は図面を覗き込み、低く唸った。
「……汚水を処理して、さらに肥料に変える。畑が豊かになれば、領民は腹を満たし、病も減る。まさに一石三鳥だ」
母は感極まったようにコリィを抱きしめる。
「……あなたが話してくれることは、みんなの未来に繋がっているのね」
コリィは少し頬を赤らめながら、でも自信を持って微笑んだ。
「わたし、江戸の町でそうしていたって本で読んだんです。だからきっと、この世界でもできます」
兵士も職人も村人も、一斉に声をあげた。
「やってみよう!」
「お嬢様の知恵を形にするんだ!」
雪の下、笑顔と熱気に包まれながら――ヴォルクハイト領は次なる挑戦へと進み出した。




