15.次は下水ですね
――ついに水路が掘り終わった。
木枠で補強された溝は、分水用の仕掛けまで備わっている。
「堰を外せ!」
兵士の掛け声で水が流れ込み――
ざざざぁぁぁ!
勢いよく駆け抜ける水の流れに、歓声がどっと広がった。
「おおーっ!」
「すごい! 本当に流れた!」
「畑にも届くぞ!」
村人も兵士も職人も、みんなが両手を上げて喜び合う。
その輪の中心で、コリィはにこにこと笑った。
けれどすぐに、小さな声でぽつりと言った。
「……次は下水ですね!」
「ゲスイ?」
一斉に首を傾げる人々。
すると父と母、兄姉が同時に頷いた。
「ああ! そうだな!」
「コリィが暖炉の前で話していた、あれね」
周囲はますます首をかしげる。
「ゲスイってなんだ……?」
「水は流れてるのに、まだ何か足りないのか?」
コリィは一歩前に出て、真剣な表情で説明した。
「はい。きれいな水を運ぶのは大切です。でも、使った後の水――汚れた水や、トイレの排水をそのままにしておくと、病気のもとになってしまいます。だから“汚い水を流すための道”も必要なんです」
ざわっ、と人々がざわめいた。
「なるほど……!」
「確かに、溜まった汚水で子どもが病気になったことがあった……」
「それを道にして流す……そんな考え方があったのか!」
ジークが力強く頷き、拳を握った。
「上水と下水。両方揃ってこそ、本当に清潔な暮らしができるんだな!」
アマーリエも真剣に続ける。
「分岐や水門と同じように、汚水も別の道に流して処理すればいいのね」
父は大きく息を吸い込み、全員に告げた。
「よし! 次は下水路だ! 領民の命を守るために!」
「おおーっ!」
再び歓声が上がる中、母はコリィの手を握り、にっこり微笑んだ。
「やっぱり……あなたのおかげで、私たちは大切なことに気づけるのね」
コリィは少し頬を染めながらも嬉しそうに笑った。




