14.滑車とテコ
翌朝。
ヴォルクハイト領の広場に、村人、職人、兵士たちが勢ぞろいした。
鍬やスコップ、木材や縄が並べられ、まるでお祭りのような賑わいだ。
「今日は水路工事だ! お嬢様のご発案を必ず形にするぞ!」
「おおーっ!」
掛け声と共に大工事が始まった。
兵士たちが鍬を振るい、職人が測量を行い、村の者が土を運ぶ。
しかし――大きな石や固い地盤にぶつかると、作業は難航する。
「うっ……この岩、びくともしねぇ!」
「木材を動かすにも、人手が足りん!」
その様子を見ていたコリィは、毛布にくるまりながらも手を上げた。
「少し……方法を変えてみませんか?」
父が頷き、皆が耳を傾ける。
コリィは小さな石を拾い、地面に置いた棒で示した。
「重いものを動かす時は、“てこ”を使うんです。棒を支点にして押すと、少ない力で大きな岩も動かせます」
ジークが試しにやってみると――
ごろり、と大岩が転がった。
「おおっ!? 動いた!」
歓声が上がる。
さらにコリィは、木の柱と縄を指さした。
「高いところに物を上げるなら、“滑車”を使うと楽になります。縄をかけて引けば、力が分散されて重さが減るんです」
職人たちは目を見開き、すぐに組み上げ始めた。
縄をかけて数人で引くと、大きな木材がするすると宙に持ち上がった。
「軽い……! まるで羽根のようだ!」
「お嬢様の知恵は本物だ……!」
村人や兵士たちは一層奮い立ち、掛け声と共に作業を続ける。
固い大地を少しずつ切り開き、水路は着実に形を成していった。
母はその光景を見つめ、コリィを抱き寄せて囁いた。
「……あなたの一言で、みんなの力が何倍にもなっていくのね」
コリィは頬を赤らめながら、にっこり笑った。
「えへへ……みんなでやるからこそ、できるんです」
雪の下、土と汗にまみれながらも笑顔を絶やさない人々。
その中心には、領地を変える知恵を次々に生み出す小さな令嬢の姿があった。




