12.機織り機
二日後。
雪の舞う朝、職人たちが大きな荷車を引いてヴォルクハイト邸にやって来た。
荷台には、木の枠と踏み板を組み合わせた見慣れぬ道具が積まれている。
「お待たせいたしました!」
「設計図どおりに組み上げてまいりましたぞ!」
玄関先に広げられた試作品を前に、屋敷の者も村人も集まってざわめいた。
「これが……お嬢様とアマーリエ様の考えた仕掛け……!」
「本当に二日で……!」
ジークは興奮気味にうなずく。
「よし、早速試してみよう!」
アマーリエが糸をかけて準備を整えると、職人が踏み板に足を乗せた。
ぎしっ。
上下する足の動きに合わせて、糸車と織り機の枠がカタカタと動き出す。
「……!! 回った!」
「糸が織り込まれていく……!」
母は目を丸くし、思わず手を口に当てた。
「まぁ……! 両手を使いながら、足で動かせるなんて……!」
使用人の女性たちも歓声をあげる。
「すごい……こんなに速く布が織れるなんて!」
「これなら夜なべも減りますわ!」
「指先も痛くならないし……!」
コリィはにこにこしながら両手を胸に重ねた。
「えへへ……本で読んだことを真似しただけですけど……本当にできてよかった」
父は静かに頷き、皆を見渡した。
「これが最初の一歩だ。水路も水車も、このペダル機も……すべて領地を豊かにする力になる」
ジークは力強く拳を握り、アマーリエは図面を見直して「次はもっと大きな織機に応用できるわ」と呟く。
職人や兵士たちは「改良なら我らにお任せを!」と声をあげた。
その日、屋敷の広間は笑顔と歓声に包まれた。
小さな踏み板の動きが――未来へ続く大きな可能性を示していた。




