10.水車試作完成
雪のちらつく小川のほとり。
職人たちが木材を組み合わせ、兄ジークが兵士と共に力強く支える。
アマーリエは図面を見ながら角度を調整し、父は黙って腕を組んで見守っていた。
「よし……できたぞ!」
小川に据え付けられたのは、まだ小さな木製の車輪。
簡素だが、立派な「水車」だった。
ジークが水路の堰を外すと――
ざばぁぁっと水が流れ込み、勢いよく車輪に当たる。
ぐるん…
ぐるん…ぐるん…
木の小さな水車が雪の中でぐるぐると回り、粉を挽き始めた。
「……!!」
その場にいた誰もが息を呑み、次の瞬間に歓声を上げた。
「回った!ちゃんと回ったぞ!」
「水の力で……木車が動いている!」
「こんな仕組み、見たことがない……!」
コリィはぱぁっと笑顔になり、両手を胸の前でぎゅっと握った。
「……本当にできたんだ!!」
水車の回転は軸を伝い、小さな石臼を押し動かしていた。
ごり、ごり、と麦粒が砕け、白い粉がこぼれていく。
アマーリエ「……粉になってる……!人が力を加えなくても……!」
ジーク「ははっ! これはすげぇ! これなら粉挽きの労力がまるで違う!」
職人たちも目を輝かせた。
「お嬢様のご発案どおりだ……!」
「こりゃあ村の暮らしが変わるぞ!」
母は感極まったようにコリィを抱き寄せ、頬ずりした。
「本当に……あなたって子は……」
父は目を細め、静かに呟いた。
「……これが領地の未来を拓く最初の一回転だ」
ハッと気づいたジークは声を上げた。
「……なぁ! これ、穀物だけじゃなく、木材を切るのにも使えるんじゃないか!?」
アマーリエがぱっと顔を上げる。
「確かに!水の力で鋸を上下に動かせば、大きな木を切るのも楽になるわ!」
職人の一人も手を打った。
「粉挽きに、製材に……いや、布を織る糸車にだって応用できるかもしれん!」
兵士が目を輝かせる。
「砦の弓の弦を一気に張る仕掛けに……!」
「おおっ!」
「それは便利だ!」
どんどん飛び出す案に、場はまるでお祭りのように賑やかになった。
コリィはくすくす笑いながら、少し照れくさそうに言った。
「本に書いてあったことだから、わたしも詳しくは知らないんです。でも……水や風をうまく使えば、きっともっと暮らしが楽しくなるはずです」
母は微笑みながらコリィを抱き寄せ、そっと囁いた。
「ええ。あなたのおかげで、みんなが夢を見ているのね」
父は腕を組み、力強く頷いた。
「……夢では終わらせん。これは現実になる。領地の未来は、ここから広がっていく」
雪の中で回り続ける小さな水車を囲みながら――
家族も職人も兵士も、皆が声を弾ませて次々と夢を語り合った。




