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第94話 よゆうにゃん

 

 「ていうか、なんでお前がここにいるんだよ?」


 「夜になってもマスターたちが拠点に帰ってこないので捜しに来ましたの。明日は何をすればよろしいですの?」


 言われてみれば、明日の指示を出すのを忘れていたぜ。そもそも日帰りのつもりだったが、台車を購入してから進行速度が落ちて野営することになってしまった。つまり、俺のせいだ。


 「悪かったな、俺の指示ミスだ。で、明日も魔物を倒して金を稼いでくれ」


 「分かりましたの」


 「あと、台車に積んである魔物の首や素材を売っといてくれ。その金は軍の運営資金にするから俺たちとは別管理で頼む」


 軍が赤字になるのは確定しているが、どれだけ赤字になるのか知りたいからな。


 頷いたマークⅢが開けた空間に、台車の荷物を次々に放り込んでいく。


 「そっちの狩りは日が沈んだら切り上げて、迎えに来てくれ」


 「分かりましたわ。では、失礼しますの」


 マークⅢは風のように去って行った。


 俺が森から侵入してくる魔物たちを倒し続けていると夜が明ける。それと同時に俺は【盗賊】たちを休ませて、ついでにマークⅠたちも休ませた。


 マークⅠは寝なくても大丈夫な体みたいだが、ダークはそうではないのにマークⅠが寝ないとなかなか寝ないので、ダークがふらふらしていたからだ。


 完全に日が昇ったところで、カミーラ、猫ちゃん、【戦士】たちと【盗賊】たちを起こして軽い朝食を済ませる。


 マークⅠたちは昼頃まで寝かせるつもりなので、索敵ができないから森から侵入してくる魔物たちを倒すしかない。


 俺は【盗賊】たちに四方を見張らせて、魔物が侵入してくるのを待ち構えているとラット種の群れが姿を見せる。


 数は通常種が三匹だ。


 〈たたかうの?〉


 魔物の気配に気づいていたのかマークⅠが俺の肩にのる。俺が視線を台車の中に向けると、ダークは眠ったままだ。


 ……こいつは本当に戦闘狂だよな。


 「今日はこのまま日が暮れるまで戦う予定だ」


 〈やったぁ〉

 

 「戦士組で迎え討て」


 その言葉に、即座に【戦士】たちが走り出し、ラットたちを瞬殺した。


 戦士組がラットたちの死体を引きずりながら戻ってきて、首を台車に投げ入れる。


 「ヒマだからカイタイするにゃ」


 猫ちゃんがラットの死体に食いついて皮を剥ぐ。猫ちゃんとワンちゃんの解体方法は独特だ。本来ならば解体用のナイフなどを使うが、彼女らの手は肉球なのでナイフなどの道具を掴めないからだ。


 この辺りに生息する魔物は黒亜人と動物系の魔物が大半を占めていて、虫系の魔物が出現することは稀なのでレベルの低い仲間たちには狩りやすい狩場だろう。


 〈なんか、まものがあつまってきてるね〉


 「くくっ、昨日、俺が倒した魔物の死体は首だけを回収して、死体はそのままにしてあるからな」


 要するに、血の匂いに釣られた魔物たちが、ここに集まるように仕向けているってことだ。


 〈うしろからイヌがくるよ〉


 「後ろだ」


 俺が振り返ると、皆も振り返る。


 ほう、通常種のコボルトが二匹か……レッサー・ラットぐらいの強さだからカミーラたちでもいけるよな?


 「カミーラとあんたで倒せ」


 俺が見張りについていない【盗賊】に視線を向けると、カミーラたちが頷いて走り出す。


 一気に距離を詰めようとするカミーラたちに対し、コボルトたちが先頭を駆けるカミーラに槍を投擲する。


 だが、カミーラは容易に槍を躱してコボルトに肉薄し、一撃でコボルトを切り捨てた。


 それを目の当たりにしたコボルトは動揺したのか動きが鈍くなり、その隙を逃さなかった【盗賊】に首を刎ねられてあえなく地面に突っ伏した。


 戦士組もそうだが盗賊組も躊躇がないよな。


 戻ってきたカミーラたちが回収した首を台車に入れる。


 「やっぱり、先手必勝よね」


 「全くだ。この剣があればそれが可能だからな」


 カミーラと盗賊組の隊員は楽しげに笑っている。


 「あんたは見張りを代わってくれ」


 【盗賊】が見張り役と交代し、見張りをしていた【盗賊】が戻ってくる。


 〈まえからワニがくるよ〉


 アリゲーター種か……際どいな。俺が目にした動物系の魔物の中で、アリゲーター種は間違いなく最強だからな。


 俺が前方を注視していると二匹のレッサー・アリゲーターが姿を見せる。


 二匹か……さて、どうするか? マークⅠに倒させたほうが無難だが……


 俺が判断に迷っていると、レッサー・アリゲーターの後ろから巨大な魔物が姿を現した。


 アリゲーターだと!? 通常種はまずい……『剛力』を加味するとレベル1でもその攻撃力は600を超えているからな。


 「や、やべぇ!! でかすぎるだろ!! あんなの初めて見たぜ」


 前方の見張りについていた【盗賊】が恐怖に顔を歪めて駆けてくる。


 まぁ、通常種は四メートルを超える巨体だから驚くのも無理はない。


 「マークⅠと戦士組で一匹ずつ下位種を倒せ。通常種は俺が倒す」


 〈やったぁ!!〉


 俺の肩から飛び降りたマークⅠがレッサー・アリゲーターたちに向かって走り出し、【戦士】たちも後を追いかける。


 俺が歩き出そうとしたところで、猫ちゃんが目に入って俺の足が止まる。


 そういえば、猫ちゃんは中途半端に強いから戦わせていなかったな。


 「猫ちゃん、ついてこい」


 「にぁ?」


 俺たちはアリゲーター種の群れに向かって歩き出す。


 アリゲーター種の群れは俺が倒した魔物の死体を食い散らかしている。マークⅠたちはアリゲーター種の群れから少し離れた場所で足を止めて、【戦士】たちが話し合っているのをマークⅠが眺めている。


 【戦士】たちの一人が地面に落ちている石を拾い、レッサー・アリゲーターに投げつけたことで戦端が開かれた。


 石をぶつけられたレッサー・アリゲーターが【戦士】たちに猛然と襲いかかり、もう片方のレッサー・アリゲーターにマークⅠが鉄の弾を飛ばしてレッサー・アリゲーターの体を貫いた。


 体から血飛沫が上がったレッサー・アリゲーターは奇声を発しながらマークⅠに突進するが、アリゲーターは気にも留めずに魔物の死体を食らい続けている。


 「猫ちゃん、あいつに『猫波』を撃ってみてくれ」 


 「にゃにゃあ!!」


 猫ちゃんが腕を前に突き出すと、肉球からリング状の光線が二発飛んでいく。


 横方向に半分ほど重なっているリング状の光線は、大口を開けたアリゲーターの口と胴体の途中までをバラバラにした。


 体半分を失ったアリゲーターは、おびただしい量の血を噴き出して動かなくなった。


 はぁ? 『猫波』って連射できるのか? ていうか、クロスボウの矢の速度より、『猫波』のほうが圧倒的に速く感じたぞ。しかもリングが重なってる部分の威力がヤバイ。さすがマークⅢが強力だと言っただけはあるな。


 「よくやったぞ猫ちゃん」


 「よゆうにゃん」


 俺が視線をマークⅠたちに転ずると、マークⅠはレッサー・アリゲーターの死体を引きずって戻ってきている。


 だが、【戦士】たちはレッサー・アリゲーターを倒してはいるが、一人が肩を借りて歩いている状況だ。


 おそらく、尻尾の一撃だろうな。噛みつかれていたら、その部分は食い千切られているからな。

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