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第91話 未知なる可能性

 

 俺は体を揺らされて目を覚ます。


 〈おはようございます〉


 目の前にはマークⅡの顔があり、俺の右隣にはワンちゃんたち、左隣にマークⅢが眠っていた。


 「おはよう。マークⅡ、マークⅠは寝なくて大丈夫か?」


 〈問題ありません〉


 〈うん〉


 「マークⅡ、ワンちゃんたちとマークⅢを起こして、テントを片付けてくれ」


 〈分かりました〉


 俺がテントから外に出ると、朝までの狩りがよほど疲れたのか、ギルとカミーラが地面に仰向けに倒れて眠っていた。


 彼らは俺が傍に寄っても起きる気配はない。


 しばらく寝かせておくか。


 「マスター、おはようございます、ですわ」


 「……おはようわん」


 「おはようにゃん……」


 ワンちゃんたちはまだ寝ぼけているのか、足取りはふらふらしている。


 「ああ、おはよう」 


 「マスター、ギルとカミーラにファテーグポーションを飲ませますの」


 くくっ、マークⅠもそうだが、こいつもかなりスパルタだよな……だが、それなら狩場を変えるとするか。


 「任せる」


 マークⅢに強引に起こされたギルとカミーラは死にそうな顔をしていたが、ファテーグポーションを飲むと顔がきりっと引き締まる。


 「ラードたちの小屋があった場所に狩場を変えるぞ」


 そのほうが村に近いから早く村に戻れるからな。


 俺たちが森に入ってしばらく進んだところで、三匹のレッサー・コボルトに遭遇する。


 「猫ちゃん、ギル、カミーラで一匹ずつ倒せ」


 頷いた猫ちゃんたちが一斉に走り出し、三人ともに一撃でレッサー・コボルトを仕留めた。


 へぇ、猫ちゃんはともかく、ギルたちも一撃なのか。まぁ、レッサー・コボルトの守備力はレベル1だと10だから当然だと言えば当然なんだが、ギルたちの攻撃に躊躇がないことが驚きだ。


 紙装甲の【盗賊】は、一撃もらえば死ぬかもしれないからな。


 俺たちが森の中を進んでいくと、レッサー・スネイクに出くわした。数は三匹だ。


 レッサー・スネイクか……確かレッサー・スネイクの守備力はレベル1でも80ぐらいはあったよな。


 「マークⅢ、猫ちゃんたちの攻撃力はどのくらいになってるんだ?」


 「猫ちゃんが70、ギルが45、カミーラが35ですの」


 猫ちゃんでも微妙なのか。


 「ワンちゃん、マークⅠ、猫ちゃんで一匹ずつ倒せ」


 〈やったぁ!!〉


 ダークに騎乗するマークⅠが、マークⅡの肩から飛び立った。


 マークⅠたちはレッサー・スネイクに肉薄し、マークⅠがミスリルダガーでレッサー・スネイクの頭を刎ね飛ばす。


 おおっ!? マークⅠが武器で攻撃しているところを初めて見たぜ。


 ワンちゃんと猫ちゃんがレッサー・スネイクたちに突進し、ワンちゃんは一撃でレッサー・スネイクを沈黙させた。だが、猫ちゃんの攻撃はレッサー・スネイクに効いておらず、猫ちゃんは悪戦苦闘している。


 「ギル、猫ちゃんを助けてやれ」


 「えっ!? 勝てるわけないじゃないっすか!?」


 「いいから行け」


 「マ、マジっすか……」


 観念したのかギルがレッサー・スネイクに向かって突撃する。


 まぁ、ギルが攻撃を受けたとしても、俺の『守護』で護っているから死ぬことはないんだがな。


 マークⅠたちとワンちゃんが死体を引きずってマークⅢの前まで運ぶと、マークⅢがレッサー・スネイクの頭を回収し、胴体にダークが食いついた。


 「キュキュ!! キュキュキュッ!!」


 ダークは嬉しそうにレッサー・スネイクの胴体をバクバクと食べている。三メートルを超える巨体のレッサー・スネイクを五秒も経たずに平らげて、ワンちゃんが倒したレッサー・スネイクの死体にも食いついている。


 こいつ、食うのがどんどん早くなってるな……それに孵化してから体のサイズが全く変わっていないし、進化の階級がないのも謎だ。


 「ワンちゃんもモフモフちゃんもすごく強いのね」


 「ワンちゃんは上級職だが、その強さは最上級職並だからな」


 「そ、そんなに強いんだ……」


 カミーラは大きく目を見張る。


 「で、モフモフの背中に人形が乗っているだろ?」


 「う、うん」


 「人形の名前はマークⅠで強さは最上級職並だ。モフモフの名前はダークで、強さはたぶん通常種ぐらいだろう」


 「マークⅠちゃんもそんなに強いんだ……ていうか、何で人形が動いてるのよ? ロストさんは人形使いみたいな職業なの?」


 「まぁ、そんな感じだな。マークⅠは俺のペットみたいなものだからな。ちなみに、ダークはマークⅠのペットだ」


 「な、何でペットにペットがいるのよ……」


 カミーラは絶句している。


 「にゃ、にゃにゃにゃあぁ!?」


 レッサー・スネイクに巻きつかれて体を拘束された猫ちゃんが、両手でレッサー・スネイクの頭を掴んで執拗な噛みつき攻撃を防いでいる。ギルは必死そうに槍でレッサー・スネイクの胴体に突きを放っているが、全く効いていなかった。


 「マークⅢ、レッサー・スネイクの守備力はどのくらいなんだ?」


 「90ですの」


 興味深いな……守備力90に対して、攻撃力70では全くダメージを与えられないとはな。


 俺は、攻撃力の70とは中間値みたいなものだと勝手に思っていた。だから猫ちゃんの攻撃で例えるなら、パンチよりキックが威力が上で、猫ちゃんが全力でキックを繰り出せば70という数値を超えるものだと思っていた。だが、攻撃力の数値はどうやら中間値ではなく、最大値だったようだ。


 そうだとすると、猫ちゃんにはレッサー・スネイクを倒す手段がない。


 猫ちゃんは手が肉球なので武器を持てないからだ。


 ギルには俺が強化したレッサー・コボルトの槍を持たしているが、攻撃力はあっても5程度だろう。だから、ギルの攻撃力45に5を足したとしても90には届かない。


 だが、高品質のガダン商会の鋼の剣は攻撃力が60あり、ギルがこの剣を持てば105になるが、与えられるダメージは微々たるものだ。結局、ミスリルしかないのかと思った瞬間、俺ははっとなる。


 「マークⅢ、昨日俺が最後に強化したガダン商会の鋼の剣をギルに投げろ」


 「なるほど、その手がありましたの」


 何もないところから剣を取り出したマークⅢが、ギルに目掛けて剣を投げると、ギルの足元に転がった。


 「何すかこれ?」


 「それなら斬れるはずだ」


 「分かったっす!!」


 剣を拾って抜刀したギルが、剣をレッサー・スネイクの胴体に振り下ろすと、レッサー・スネイクの胴体から血飛沫が上がる。


 「この剣すげぇっすね!!」


 ギルは剣をマジマジと見つめている。


 まぁ、俺が強化したことによって、あの剣の攻撃力は120、ギルの攻撃力が加わると165になっているから当然だ。


 レッサー・スネイクは怒声を放ち、猫ちゃんの拘束を解いてギルに襲いかかる。噛みつきや尻尾を振るってギルを攻撃するが、ギルは危なげなく攻撃をかわしながら反撃を繰り返し、レッサー・スネイクを倒したのだった。


 「よくやったギル」


 「あざっす」


 くくっ、これで光明が見えた。俺が猫ちゃんやギルに無理な戦いを強いていたのは、俺の軍を鍛える方法を模索していたからだ。


 満足した俺は一気にラードたちの小屋があった開けた土地へと移動する。


 「マークⅠとワンちゃんで下位種をここまで連れてきてくれ。行った先の魔物が通常種以上だったらその場で倒せ」


 〈わかった〉


 「わかったわん」


 匂いを嗅ぐ仕草を見せたワンちゃんが駆けていき、マークⅠたちも別の方向に飛んでいく。


 しばらくすると、黒のレッサー・オーク二匹に追われるワンちゃんが姿を現し、そのままこっちにやってくる。


 「猫ちゃんとギルで倒せ」


 まぁ、レッサー・オークなら余裕だろ。


 「マークⅢ、リインフォースの魔法の検証の続きをやるから武器を出してくれ。マークⅡはお前自身にマジカルライズの魔法を使ってから、俺にマジカルライズの魔法をかけてくれ」


 「分かりましたの」


 〈分かりました〉


 マークⅢが槍を地面に10本並べると、俺は淡い光に包まれた。


 またレッサー・コボルトの槍か……まぁ、検証だから何でもいいが。


 「リインフォース」


 俺は魔法を唱えて順番に槍を強化していく。


 「どんな感じだ?」


 「これまでの結果に加えて、性能が2.5倍や3倍に強化されている槍がありますの」


 「さ、3倍だと!?」


 「1本だけ耐久値が3倍になっていますの。残りの9本は硬度か耐久値が2.5倍になっていますわ。次は骨騎士の剣で検証してみますの」


 骨騎士の剣か……確か高品質の鋼の剣より、攻撃力は上ってマークⅢは言っていたよな。


 マークⅢが剣を地面に30本並べると、俺は剣を強化していく。


 「どうなった?」


 「……」


 マークⅢは何も返答せずに身じろぎもしない。


 「……おい、どうしたんだ?」


 「と、とんでもない剣が1本だけありますの……」


 「まさか4倍が出たのか?」


 「それもすごいと思いますが、硬度でも耐久値でもなく、素早さが1.5倍になる剣がありますの!!」


 はぁ? 素早さだと? 素早さなんか剣に関係ないだろ?


 「……どういう意味なんだ?」


 「そのままの意味ですわ。例えるなら素早さが1.5倍になる『俊足』が付加されたような剣だということですの。つまり、この剣は魔導具ですわ」


 マ、マジかよ……お、俺が魔導具を作ったのか?


 俺は平静を保てなかった。


 「ほ、他にはないのか!?」


 「魔導具と言えるのはこの一本だけですわ。おそらく、魔法がクリティカルした結果なのだと思いますの」

 

 魔法にクリティカルなんてあったのか……だが、言われてみるとワンちゃんの『肉球パンチ』なんかは特殊能力のクリティカルだから、魔法にクリティカルがあってもおかしくはない……


 「とりあえず、何でもいいから武具を出せ。手当たり次第に強化すればまた出るんじゃないか?」


 「やるなら最低でもガダン商会の鋼製品で試したほうがいいですの。どうでもいい武具を強化しても使い道がありませんから」


 「……確かにな」


 「この剣は帯刀しているだけで、効果が発揮できるようですの」


 マークⅢが骨騎士の剣を俺に手渡した。


 「いや、とりあえずその剣はお前が持っておけ」


 「えっ? よろしいんですの!?」


 「ああ。今の俺のステータスを鑑みると、今ですらオーバーステータスだからな。ならお前が持っていたほうが隊としての総力が上がるからな」


 「ありがとうございます、ですわ!!」


 マークⅢは嬉しそうに骨騎士の剣を腰に帯びた。


 その後、俺は猫ちゃんとギルたちをしばらく鍛えてから、急いで【無銘の刀】の拠点に移動したのだった。

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