表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/96

第87話 無銘の刀④ ☆エクス ポム

 

 俺たちは魔物の村から、ミルアたちの小屋があった地点を通過し、俺たちの小屋があった場所に移動した。


 「お前たちはここで猫ちゃんを鍛えてくれ。俺は残り三カ所の小屋がある場所を回って、【無銘の刀】に顔を出してから戻ってくるつもりだ」


 「分かりましたの」


 俺はデインたちの小屋があった場所に行ってから、ラードたちの小屋があった場所にも行ってみたが、小屋があった四カ所のいずれも小屋を発見できなかった。


 西側ではもう小屋は出現しないのかもな……


 そう思いながら俺は【無銘の刀】の拠点である古びた宿に向かう。


 かなり飛ばして進んだので、一時間もかからずに拠点に到着した俺は、宿の中に入って食堂へと足を運んだ。


 食堂は人でごった返して騒がしかったが、俺は歩きながらエゼロスを捜す。


 それにしても前に訪れた時とは状況が違いすぎる。


 「ロストじゃないか!!」


 声が聞こえた方に俺が振り向くと、そこにはエゼロスとハゴンの顔があったが、なぜか喧騒がピタリと止んで静まり返る。


 あぁ? なんでいきなり静かになったんだ?


 俺が不審げに当たりを見回すと、俺に注目が集まっているようだった。だが、俺は意に介さずにエゼロスたちが並んで座るテーブル席に歩き出す。

 

 「盛況じゃないか」


 「ああ、シズナとソローミのおかげだ。シズナたちがここを頼ってきた日本人たちを率いて狩りに赴き、稼いだ金を頭割りで分配しているから金や経験値も稼げる。その噂を聞いた困窮した日本人たちがやって来るから、今やシズナたちは大人気で狩りに行く順番待ちが発生している状況なんだ」


 エゼロスは満足げに微笑んでいる。


 へぇ、稼いだ金を頭割りで分配しているのか。通常種を倒せるのは上級職のシズナたちだけだから、頭割りでは割に合わないと思うが、さすがエゼロスといったところか。


 俺は思わず口元に笑みが浮かぶ。


 「そ、それにしてもすごい装備だなロスト」


 ハゴンは物珍しそうに俺の鎧を見つめている。


 「HQのミスリルの装備だ」


 「HQ? ということは普通のミスリルよりも高いんだよな?」


 「ああ、だいたい二倍ぐらいになる」


 「……あんたどんだけ稼いでるんだよ」


 ハゴンはゴクリと息を呑む。


 「皆聞いてくれ!! 彼はうちの指導役のロストだ。下級職だったシズナとソローミを上級職に導いて強くしたのも彼なんだ」


 エゼロスが大声を張り上げる。 


 「マ、マジかよ……」


 「すごい装備だから現地人が乗り込んできたのかと思ったわよ」


 「何者なんだと思ってたがそういうことなのか……」


 静寂に包まれていた場が一気に騒然となる。


 なるほどな。皆が俺を見ていたのは俺の装備がミスリルだからか。まぁ、考えてみると革や鉄が当たり前なんだから皆が驚くのも無理はない。今後は戦士の村で活動するときはミスリルファイタースーツを着たほうがいいな。俺は目立つのを好まないからな。


 「まぁ、掛けてくれロスト。先に彼らの話を済ませたいんだが構わないか?」


 エゼロスは自身の隣の席を手で指し示し、エゼロスたちの対面の席には見知らぬ男女が腰掛けていた。


 「ああ」


 俺はエゼロスの隣の席に座る。


 「彼らはうちに入りたいと申し出てきていて、うちの説明をしているところなんだ」


 俺が対面の男女に目をやると、二人共とも革の鎧を着ていた。【戦士】か?


 「職業は何なんだ?」


 「二人とも【盗賊】だ」


 マジかよ……うちにも欲しいぜ盗賊。


 「うちは困窮した者たちを支援する団体だ。だから君らがうちに入ったとしてもちゃんとした報酬は払えない」


 「もちろん、それは分かった上で【無銘の刀】に入りたいと思ってる。逆に聞きたいが俺たちは【盗賊】だ。それでも入れてくれるのか?」


 「【盗賊】が戦闘に不向きなのは承知しているつもりだ」


 そうなんだよな。盗賊はレベル1だと素早さだけは100を超えているが、攻撃力は30ほど、守備力は10ほどで後衛職と変わらない紙装甲で魔法も使えない。だが『開錠』『施錠』『しのびあし』『罠解除』などの多数の特殊能力を持っていて、その中でも『危険察知』は有用だ。


 「話の腰を折って悪いが、魔物と戦えないのなら【盗賊】たちはどうやって生活しているんだ?」


 「その説明をする前に、俺たち【盗賊】は最初のパーティから何かしらの理由で離れることになると、もうパーティを組むことは絶望的になる。組めるとしたら俺たちのように【盗賊】だけだが、俺たちが群れたところで戦闘では何の意味もない」


 【盗賊】の問題点はそこなんだよな。戦闘では活躍できないからいらない者扱いになっている。実際、俺たちに【盗賊】がいなくてもやってこれたからな。まぁ、俺たちにはマークⅠがいたからなんとかなったとも言えるが。


 「で、戦えない俺たちがやれることと言ったら冒険者ギルドの採取依頼だろうな。俺たちは主にポーションの材料に使われる青い茸と青い草を採取してるんだ。だが、それらの素材は森の中に自生していることがほとんどで、森には魔物が出るからかなりリスキーなんだ。だから『危険察知』を持ってなくて、一人で動いてる【盗賊】はもうほとんど残っていないだろうな」


 マジか……『危険察知』は【盗賊】が必ず持っているわけではないのか……思っていた以上に【盗賊】たちの状況は悪すぎるな。早急に打開策を講じる必要がある。


 「……話を進めてくれ」


 「俺たちは【無銘の刀】が頭割りで報酬を分配していることに衝撃を受けたんだ。所詮、支援団体だといっても団体を存続させるためには金がいるからな。だから【無銘の刀】でパーティを組んだとしても足元を見られて報酬は極めて少ないんだと思っていたんだ。だが違った……この支援団体は本気で俺たちを支援するつもりなんだと思ったから、俺たちは【無銘の刀】に入りたいんだ」


 「あんたらの気持ちは良く分かった。名前を聞かせてくれないか?」


 「俺はエクス、こっちはポムだ」


 「【無銘の刀】にようこそ。これからよろしくな」


 「こちらこそ、よろしく頼む」


 エクスとポムは会心の笑みを浮かべている。


 エクスの容姿は金髪のイケメンで、ポムは長いピンクの髪が印象的な美人だ。


 まぁ、そうなるだろうな。俺でもこの二人ならパーティに加えたいと思うからな。

ポムのイメージ

挿絵(By みてみん)


エクスのイメージ

挿絵(By みてみん)


ここまで読んでくれたあなたの一つのブックマークや評価が、作者の命綱です!

少しでも「続きが気になる!」と思っていただけたら、ブックマークや評価(↓の★★★★★)で応援していただけると嬉しいです。


勝手にランキングに参加しています。

リンクをクリックしてもらえるとやる気が出ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング に参加しています。 リンクをクリックしてもらえると作者のモチベーションが上がります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ