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第73話 第一砦への誘い


 「先ほどは助けられた。礼を言わせてくれ。ありがとう」


 俺たちが声が聞こえたほうに顔を向けると、そこにはアンデッドたちから逃走した人族たちの姿があり、リーダーらしき戦士風の男が深々と頭を下げていた。


 「見ない顔だが冒険者なのか?」


 「私たちは冒険者ですが日本人ですの」


 「なっ!? 日本人だと……」


 戦士風の男は絶句している。彼の仲間たちからもざわめきが起こっている。


 「違和感なく人族語を話しているのも驚きだが、日本人の強者たちの情報は押さえているはずなのに、まだ君らのような存在がいたんだな」


 「ふふっ、いずれ私たちが日本人最強になりますわ」


 「ほう」


 戦士風の男は興味深げにマークⅢを見つめている。


 いやいや、【風使い】のヒュリルにはどうやっても勝てないだろ。


 「私たちに冒険者なのかと尋ねたということは、あなた方は採取隊ですの?」


 「ああ、我々は採取隊だ」


 「私たちは日本人のアフネアの協力者ですの。ですから採取隊のあなた方を助けることができて良かったですわ」


 「なるほど、アフネア繋がりか……では我々が君らに助けられたと上に報告しておくよ」


 「ありがとうございますわ」


 くくっ、ちゃっかり、アフネアのことをアピールするとはさすがマークⅢだぜ。


 「ちなみに、君らはどの辺りまで進む気なんだ?」


 「私たちはここで戦うのは初めてですの。ですから、進めるところまで進むつもりですわ」


 「しょ、初見でボーンゴーレムの群れや、スケルトンナイトの群れと戦って勝ったのか……」


 戦士風の男はただならぬ表情を浮かべている。


 「ここから先に進めば、スケルトンナイトやボーンゴーレムが頻繁に出ますの?」


 「いや、基本的にスケルトンナイトやボーンゴーレムは瘴気の魔法陣の守手で、一カ所に瘴気の魔法陣の数が増えると出現するらしいんだ」


 「それを聞いて少し安心しましたの。私たちだけならスケルトンナイトやボーンゴーレムは何の問題もないですが、私たちの仲間たちにはきつい相手ですから」


 「何? 君たちは四人パーティではないのか?」


 はぁ? こいつら俺たちがいたことにすら気づいてなかったのかよ。


 「私たちはロスト隊で、セカンドパーティにマロン隊がいますの。合計で20人ほどいますわ」


 「ロスト隊? 君は女性に見えるが名前はロストなのか?」


 「私の名前はマークⅢで、私のマスターがロストですの」


 マークⅢが俺に手を向けて紹介する。


 「なるほどな、君しか人族語が話せないから君が交渉役をやっている訳か」


 戦士風の男は合点がいったような顔をした。


 まぁ、マークⅢ以外は人族語が分からないというていでいたほうが、俺にとっては都合がいい。人族たちの本音が聞きやすいからな。


 「いえ、マスターも分かりますわ」


 マークⅢが自信ありげに言い放つ。


 おいおい、俺の計画がいきなり破綻したじゃねぇか……こいつは俺に対するプライドが高すぎるんだよ。


 「えっ?」


 戦士風の男は面食らって思わず俺を見る。


 「俺は交渉事はマークⅢに丸投げしてるんだ」


 なんか俺がダメな奴っぽくなってしまっているが、まぁ、本当のことだから仕方ない。


 「それにしても人族語を話せる人材が二人もいるとはすごいな……これまではアフネアしか確認されていなかったからな。もしよければうちの砦で戦ってみる気はないか?」


 「砦?」


 マークⅢが訝しげに聞き返す。


 「ここから北西の位置に我々の拠点の一つである第一砦があるんだ。君らの仲間たちもそこでなら戦いやすいと思ったんだ。その砦には手練れの冒険者たちも稼ぎに来ているんだ」


 「なぜわざわざ現地人の冒険者が砦で戦ってますの?」


 「理由は二つある。一つは砦の周辺で狩った魔物の討伐金が冒険者ギルドが提示する額の一.五倍になることだ。二つ目は魔物の首の換金についてだ。多くの魔物を倒して魔物の首や素材を回収しても、移動に支障が出て戻らざるを得なくなる。だが砦なら魔物の首を砦内で換金できるし、砦内でいつでも休めるというメリットがある」


 〈マスター、どうしますか?〉


 マークⅢが思念で俺に判断を委ねる。


 首の回収については、うちにはマークⅢの『アイテム収納』があるからどうでもいいが、魔物の討伐金が一.五倍になることや砦内で休息できるのはいいな。


 俺は無言で頷いた。


 「砦に行きますわ。ですがその前に、仲間たちが東に進んでいるので合流してからになりますの」


 「分かった。我々も砦に帰還するつもりだったから同行しよう」


 俺たちと採取隊が東に進んでいくと、ラードたちがゾンビ種の群れと戦いを繰り広げていた。


 ミコとマロン隊が前衛としてゾンビ種の群れと戦っていて、中衛にラードとラゼ、後衛の護りにはネヤがついている状況だ。


 俺たちは中衛にいるラードたちの元に歩を進める。


 「よぉ、無事で何よりだ。で、そいつらは何なんだ?」


 戦士風の男たちを一瞥したラードが探るような眼差しを俺に向ける。


 「採取隊だ。彼らの拠点の砦で戦うことにした。砦の周辺の魔物を狩れば討伐金が冒険者ギルドの一.五倍になるらしいからな」


 「そりゃおいしいな」


 ラードが満足げに微笑む。


 「……前衛が押されているが大丈夫なのか?」


 戦士風の男が戦場を見て顔を顰める。

 

 ミコ、マミ、マロン、キリが前に出てゾンビ種の群れと戦っているが、防御陣を築いている【重戦士】たちや【盾士】たちが二匹のハイ・ゾンビに滅多打ちにされている。彼女らも反撃しているが、その攻撃はことごとく空を切っている展開が続いている。


 「派手にやられているように見えますが、攻撃を受けているのは【重戦士】や【盾士】ですから、あの程度の攻撃なら何の問題もありませんの」


 「【重戦士】よりも防御に特化した【盾士】もいるのか……【盾士】は珍しい職業でめったにいないからな」


 「私たちの隊には下級職はいませんし、最上級職の【聖女】もいますの」


 マークⅢが得意げに話す。


 「なっ!? 【聖女】だと……それはすごい。我々の精鋭部隊にも【聖女】は聞いたことがないからな」


 戦士風の男は動揺を隠しきれないといった様子だ。


 マロンたちがゾンビ種の群れを倒し、残るはハイ・ゾンビ二匹だけになったが、ミコが容易くハイ・ゾンビたちを肉片に変えて、ゾンビ種の群れは全滅した。


 「ハイ・ゾンビたちを瞬殺するとは、あの女戦士は飛び抜けて強いな」


 「私たちを除けばミコが一番強いですの」


 「なるほどな」


 討伐部位を回収した俺たちは、採取隊と共に第一砦へと向かったのだった。

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