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第65話 戦果 ☆キリ

 

 俺が視線をマークⅡたちに向けると、上位種の糸に体を拘束されたラゼが糸を振り回されて宙を舞っていた。そのままの勢いでラゼは地面に叩きつけられる。


 マジかっ!?


 俺は一直線に突き進んでラゼの元に駆けつけ、即座にラゼの体の自由を奪っている糸を長剣で切断する。


 「大丈夫か!?」


 「……ミ、ミスったわ」


 口から血を流すラゼはこの状況でも能面のように無表情だ。


 よし、意識があるならなんとかなるはずだ。


 俺が振り返るとワンちゃんもついてきていて、その肩にはマークⅠものっていた。


 ダークの背に乗っているかと思ったが、ナイスだマークⅠ。


 「マークⅠ、ラゼを治療しろ」


 〈わかった〉


 ワンちゃんの肩から飛び降りたマークⅠがラゼの傍に移動し、ラゼの体が何度も金色に輝く。


 「よし、ワンちゃん、ラゼをレシアの元に連れて行ってくれ」


 「わかったわん」


 ワンちゃんはラゼを背負ってラードたちがいる方向に駆けていき、マークⅠが俺の肩に飛びのった。


 俺が再び視線をマークⅡたちに転ずると、マークⅡが正面から上位種の前脚の連撃を戦斧で弾き返しながら、アイアンランスの魔法を撃って奮闘していた。その後方からマークⅢがファイヤの魔法で攻撃し、上位種の胴体は炎に焼かれている状況だ。

 

 ミコは上位種の側面から脚を切断しようと攻撃し続けていて、脚が一本ないから『斬撃』を連発して切断に成功したんだろうな。


 もう一人のミコは体が半分溶けて動く気配がない。どっちが分身なんだ? あっちじゃないよな?


 俺もミコとは反対側に回り込んで、上位種の脚を長剣で切断しようとしたが傷が少しついただけだった。


 こいつ、どんな守備力をしてやがんだよ。まぁ、同じところを何度も攻撃すれば切断することも可能だと思うが、これはマークⅢたちが望んだ戦いだから俺が本気になって戦うことは躊躇われる。


 「ポイズン」


 俺がポイズンの魔法を唱えると、マークⅠも魔法を放つ。


 緑色の風と無数の石や岩が上位種の胴体に命中するが、上位種はこちらを見ることもない。


 〈ぜんぜん、きいてないね……〉


 マークⅠが不満そうに呟いた。


 「まぁ、でかすぎるからな」


 アースの魔法はともかく、ポイズンの魔法は徐々に効いてくるだろうから、こんなもんでいいだろう。


 俺は上位種から少し離れたところでマークⅡたちの戦いを静観していると、マークⅢが巨大な火柱を放った。


 火柱は上位種の胴体に直撃し、上位種の体は一気に燃え上がり、上位種の口から絶叫が迸る。


 マークⅢが一回も使っていなかったから忘れていたが、あれは確か特殊能力の『火柱』だよな。こんなに強力な特殊能力だったのか。


 怒りの形相の上位種がマークⅢに突撃し、それをマークⅡが阻止しようとするが、上位種の猛攻の前にマークⅡは防戦一方になる。


 これはやばそうだな……

  

 俺がマークⅡの救援に動こうとした時、マークⅢがさらに『火柱』を放ち、巨大な火柱が上位種の胴体にぶち当たり、胴体が焼け焦げて上位種は体が前と後ろに分かれて崩れ落ちた。


 「……あいつ、狙ってやがったな」


 胴体を脆くするためにファイヤの魔法や『火弾』で胴体を焼き、二発の『火柱』を胴体に命中させることで止めを刺したんだ。全てはマークⅢがアナリシス(解析)の魔法を持っているから成立する戦術だな。


 〈やったぁ!! おおきいクモをたおしたよぉ!!〉


 上位種はまだ動いているが、体が炎に焼かれているから時間の問題だろう。


 しばらくすると、上位種は動かなくなり、マークⅢが上位種の首を回収して俺たちはラードたちと合流する。


 「……よくあんな化け物に勝てたよな」


 マークⅡとマークⅢを見つめるラードは心底驚いているようだ。


 「勝算があったから戦っただけですわ。それよりも、ラゼさんは大丈夫ですの?」


 「ああ、今は眠ってるが命に別状はないようだ」


 「それなら良かったですわ」


 俺たちは再びエルザフィールの街に向かって進み始める。マークⅡ、マークⅢ、ミコはさすがに疲れたのか中衛に下がり、前衛はラードたちが務めているが、それでも俺たちは何の問題もなくエルザフィールの街に到着する。


 まっすぐに転職の神殿に赴いた俺たちは転職を試みる。


 ミルアたちやマロン隊の下級職たちが転職できればいいんだが。


 俺が壁を背にもたれかかると、ダークを胸に抱くルルルとレシアが俺の隣に並ぶ。


 彼女らも俺と同様に転職する必要がないから暇なんだろう。


 俺たちが成り行きを見守っていると、仲間たちから喝采が上がっていい雰囲気だ。


 くくっ、何人かは転職できたみたいだな。


 しばらくすると、転職確認を終えたラードたちが俺たちの前に集まる。


 「いい結果になったぜ。ミルアたちとマロン隊の下級職たちの全員が上級職に転職できた。だが、俺たちは誰も最上級職に転職できなかったが」


 はぁ? マジかよ? 出来過ぎじゃないのか? だがこれで俺たちの隊に下級職は一人もいなくなったことになる。


 「上出来だ。皆よくやってくれた。これで狩場をエルザフィールの東や南に移すことができる」


 〈マスター、ミルアは【戦神官】、パエルは【呪術師】、ベルアは【弓豪】に転職できましたの〉


 マークⅢが思念でミルアたちの詳細なステータスを俺に報告する。


 

名前: ミルア

職業: 【戦神官】レベル: 1

HP: 250

MP: 200

SP: 250

攻撃力: 200

守備力: 100

素早さ: 150

魔法: ヒール, キュア, マジックシールド, レジスト

特殊能力: MP回復


中衛でも戦えるヒーラーといったところか。回復魔法を使える仲間はレシア以外にいないので素直に嬉しいぜ。あとは全ての耐性が上昇するレジストの魔法が使えそうだ。



名前: パエル

職業: 【呪術師】レベル: 1

HP: 200

MP: 440

SP: 300

攻撃力: 40

守備力: 30

素早さ: 40

魔法: カース, スロー, ペトリファイ, ハルシネーション, エナジードレイン

特殊能力: 統率, MP回復


 驚きなのが彼女は【戦士】だったのに【呪術師】に就けたことだ。それによってステータスの値がかなり下がっているので、後衛用の装備を買い直す必要があるが貴重な後衛なのでありがたい。あとは状態異常系の魔法が豊富で、その中でもエナジードレインの魔法が強力だ。効果は相手の経験値を奪って自分に加算できる極悪な魔法だ。



名前: ベルア

職業: 【弓豪】レベル: 1

HP: 400

MP: 0

SP: 500

攻撃力: 200

守備力: 100

素早さ: 100

魔法: 無し

特殊能力: 集中, 三連矢, 狙撃


 『狙撃』は射程距離が伸びる上に命中率が上昇するので、後衛から前衛の敵を攻撃することも可能だろうな。あとは『三連矢』が同時に三本の矢を放てるので攻撃にも期待できそうだ。


 

 〈あとはマロン隊の下級職たちですが、キリが【武者】、タニャ、ジック、ニールが【盾士】、ヌーネ、ロノ、ケーラ、ジネルが【重戦士】ですわ〉


 マークⅢが思念で俺に【盾士】と【重戦士】のステータスを報告した。



職業: 【盾士】レベル: 1

HP: 700

MP: 50

SP: 500

攻撃力: 200

守備力: 200

素早さ: 150

魔法: シールド

特殊能力: 堅守(武器を持つと発動しない), スタミナ回復, 物理軽減



職業: 【重戦士】レベル: 1

HP: 700

MP: 0

SP: 800

攻撃力: 200

守備力: 200

素早さ: 80

魔法: 無し

特殊能力: 堅守, 強力



 なんで【武者】の説明がないのかと思ったが、そういえば【無銘の刀】のシズナが【武者】だったからか……全く頭のいい奴は一度説明したら分かるだろって感じなんだろうな。


 で、【盾士】と【重戦士】は守備に特化した職業だから壁役にぴったりだ。しかも、【盾士】は最上級職でも持っていることが珍しいと言われる『物理軽減』がある。だが、【盾士】の注意点は武器を持っていると『堅守』が発動しない点だ。これは【剣豪】が盾を持つと『回避』が発動しないのと似ているな。


 「やっと隊に貢献できそうなので嬉しいです」


 ミルアが満面の笑みを浮かべている。


 「それにしても一気に転職できたのが不思議よね?」


 「おそらく、黒亜人たちを大勢倒したことが理由だろうな。違うのなら私も理由が知りたい」


 マロンの問いに、マミが答えたが、その彼女も難しげな表情だ。


 まぁ、転職できた理由は黒亜人を大勢倒したということより、大量の経験値を稼いだという結果だろうな。


 要するに、黒亜人でなくても魔物でも同じ結果だと思う。しかし、いくら考えても答えは出ない。


 ちなみに、マークⅢいわく、アナリシスの魔法ですら転職可能か判断できる項目はないらしい。


 だが、資質の項目はあるらしく、10段階らしいが何の資質なのかは不明だそうだ。


 「なんにせよ、転職できたんだからいいじゃないか」


 そうラードが締めくくって、俺たちは転職の神殿を後にしたのだった。

キリのイメージ

挿絵(By みてみん)


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