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第62話 黒亜人たちの野営地


 「作戦はありますの?」


 「そんなものはない。黒オーク種と黒コボルト種ばかりらしいから、まずは遠距離からテントを攻撃する」


 「分かりましたわ」


 〈分かりました〉


 〈やったぁ!!〉


 歩いているマークⅡの体が淡く輝き、続いてマークⅠとマークⅢの体も淡い光に包まれる。


 この輝きはマークⅡのマジカルライズの魔法だろうな。マークⅠとマークⅢも魔法による攻撃が主体だからいい判断だ。


 俺たちがある程度テントに近づいたところで、マークⅢがファイヤの魔法で攻撃し、テントが派手に燃え上がって中から黒亜人たちが奇声を上げながら躍り出てくる。


 そこにマークⅡがアイアンランスの魔法で狙い撃ち、黒亜人たちは何もできずに倒れていく。


 このテントにいるのは通常種のコボルトばかりだな。数は30匹程度といったところか。だとするとテントの数は30以上あるから900匹以上という計算になる。


 まぁ、オークとコボルトだからなんとかなると思うがこの数は多い。これにハーピーやリザードマン、指揮官のウェアウルフが加わるとなると、とんでもない数になる。


 こいつら湖の勢力に大攻勢をかけるつもりだったのか?


 それとも、俺が知らないだけでこんなことは日常茶飯事な可能性もあるが――とにかく、まずはこいつらを倒さないとな。


 俺が戦場に視線を転ずると、マークⅡとマークⅢが魔法攻撃だけでテント一つを壊滅させていた。別のテントの上空からマークⅠがアースの魔法でテントを攻撃し、破壊されたテントの出入口から飛び出して来たオーク種たちが、ダークが放った黒い竜巻に切り裂かれて肉片に変わっている。


 くくっ、戦闘になると容赦ないなマークⅠは……で、ダークのあの黒い竜巻のことをマークⅢに聞いてみると、『闇旋風』という特殊能力だった。


 『闇旋風』は一分ほど消えない闇属性と風属性の竜巻らしい。この竜巻に切り裂かれると高確率で盲目になるらしく、竜巻の操作もできるみたいで、敵は目が見えない状態で竜巻に切り裂き続けられるという極悪な特殊能力だ。


 それにダークはマークⅠのペットだから全く気にしてなかったが、なんとダークは魔物だということだ。強さもステータスの値が200ぐらいあるらしく、マークⅠより強いらしい。


 二つのテントが攻撃されたことにより、騒ぎに気づいた黒亜人たちがテントの中から続々と姿を現し、「敵が攻めてきた!!」と喚き散らして辺りを見回している。


 黒亜人たちの言葉も理解できるとは、さすが『言語』の指輪だぜ。


 「お、おい……この数はやばいんじゃないか?」


 ラードが不安げに俺に尋ねる。


 「俺たちだけなら問題ない。お前らが戦うか退くかはお前が決めろ」


 「この数をお前らだけで捌けるのか……だったら俺たちも戦うぜ」


 少しの間考える素振りを見せたラードが意を決したような表情になる。


 「だったらミルアたちとマロン隊の下級職たちは俺がみる」


 「分かった。俺たちは好きに動かしてもらうぜ」


 ミルアたちとマロン隊の下級職たちが俺の後ろに集まり、ラードたちが後退していく。即座にマークⅡ、マークⅢが前進すると俺たちを視認した黒亜人たちが押し寄せてくる。


 数は200匹ほどいるので圧巻だ。


 湖でもこのぐらいの数の黒亜人たちとは戦ったが、それは俺たちが側面から攻撃をしていただけで、正面から戦った訳ではないからな。


 まぁ、俺とマークⅡだけでならこの数でも正面からでも戦える。


 こいつらは攻撃手段が物理しかないから、守備力の値が高い俺たちにダメージを与えることはできないからだ。


 だが、ミルアたちが一緒だとそれは不可能だから下がりながら戦うしかない。


 「ベルアは俺の後ろから弓で攻撃しろ。他はコボルト種だけを狙え」


 ミルアたちとマロン隊の下級職たちが緊張した面持ちで頷いた。


 黒亜人の群れがマークⅡとマークⅢに襲い掛かり、マークⅡたちが囲まれて戦闘になる。当然だがマークⅡたちだけで殲滅できるはずもなく、マークⅡたちは突破されて黒亜人の群れが俺たちに迫る。


 「わふぅ?」


 俺の傍に控えていたワンちゃんが俺に顔を近づけて指示を仰ぐ。


 「ミルアたちに近づくオーク種を倒してくれ」


 「わかったわん!!」 


 ワンちゃんがオーク種の群れに突進し、ミルアたちがコボルト種たちと戦いを繰り広げるが、すぐに囲まれる。


 「ひ、ひぃ!?」


 俺の後ろで矢を放っているベルアが、ミルアたちの状況を目の当たりにして小さく悲鳴を漏らす。


 「囲まれないように下がりながら戦え」


 ミルアたちの後方に回り込んでいるコボルトたちを俺が長剣で斬り裂くと、ミルアたちが後方に下がる。


 〈……ぜんぜん、たおせてないね〉


 俺の近くの上空から戦いを観察していたマークⅠが不満げに呟く。


 通常種のコボルトの攻撃力はレベル1で50ほどだから、ミルアたちの半分ほどの数値なので楽勝のはずだ。


 しかし、そうならないということはレベルの高い個体が混じっているんだろうな。かといって、オーク種は『徒党』を持っているから、ミルアたちでは勝てない。


 ダークがミルアたちの傍に『闇旋風』を放ち、竜巻がコボルトたちを切り裂き、コボルトたちは混乱状態に陥る。


 さすがマークⅠだ。『闇旋風』を放つ位置がいい。さらに二発目の『闇旋風』が放たれ、ミルアたちが態勢を整える。


 ミルアたちの両端に『闇旋風』が配置されているので、コボルトたちがミルアたちの後方に回り込もうとしても竜巻に邪魔されるからな。だが、しばらくはもつが、早く倒さないと次が来る。


 今戦ってる奴らはおそらく、全体の三分の一程度の数だからな。それに野営地のボスはたぶんアヴェンジャーだろうから出てこられると厄介だ。


 俺が視線を黒亜人たちの野営地に転ずると、俺の予想通りに第二陣が野営地から出陣し、300匹ほどの黒亜人たちがマークⅡたちに襲い掛かる。


 しかし、ラードたちが遠距離から黒亜人たちを攻撃したことにより、黒亜人たちがラードたちにも襲い掛かる。だが、ラードたちは後退し続けている。


 黒亜人たちを引き寄せて分断する作戦のようだ。


 いい作戦だがオークたちの守備力の高さにラードたちは驚くことになるだろう。高レベル個体だと守備力の値が400ほどになっているから、『斬撃』を持つミコとマミ、『発勁』を持つラゼぐらいしかダメージが通らないからな。


 なので、後衛のキャニルとルルルをいかに使うかが鍵になる。まぁ、ラードにはネヤとキャニルがついているからなんとかなるだろう。


 後退しながら黒亜人たちと戦うミルアたちがやっとのことで黒亜人たちを倒し切る。彼女らは肩で息をしていて、疲労困憊だが、ワンちゃんは一人でオーク種の群れを倒し切っても余裕そうだ。


 まぁ、ミルアたちは11人で100匹以上のコボルト種を倒したのだから、いい経験値稼ぎになっただろう。


 マークⅠが『治療』とファテーグの魔法で、ミルアたちの体力とスタミナを回復した。


 俺たちは前進してマークⅢと戦いを繰り広げている黒亜人たちに攻撃を仕掛け、黒亜人たちを引き寄せて後退しながら戦う。


 ラードたちも俺たちと同様の作戦で戦っているが、野営地からは第三陣目が出撃し、マークⅡたちはとんでもない数の黒亜人たちに囲まれている状況だ。


 問題はSPだが、マークⅡは『スタミナ回復』を持ってるし、マークⅢは『アイテム収納』でファテーグポーションを取り出してSPを回復できるからなんとかなるだろう。マークⅡたちからすれば、黒オーク以外は雑魚でしかないからな。


 俺たちが黒亜人たちと戦い続けていると、野営地からの第四陣目の出撃はなく、俺たちは黒亜人たちを全滅させることに成功し、ラードたちやマークⅡたちが戻ってくる。


 「黒オークが硬くて厄介だったぜ。あの硬さは反則だろ」


 「だろうな」


 それでも、あの数の黒オークを相手になんとかしたんだからたいしたものだ。


 「俺たちは今から野営地に乗り込むが、お前たちは待機していてくれ」


 「分かった……気をつけろよ」


 「ああ」


 頷いた俺が野営地に向かって歩き出すと、マークⅠたち、マークⅡ、マークⅢがついてくるが、当然のようにワンちゃんもついてきたのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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