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第60話 見栄


 翌日、俺たちは新たな狩場を求めて南の砦を南下していた。


 別に狩場は東の砦周辺でもいいんだが、ミルアたち三人とマロン隊の隊員八人が下級職なので、下位種が多い狩場を探した

い。


 だからといって、西の小屋周辺では通常種が少なすぎるから、ラードたちを遊ばせることになるからな。


 「なぁ、このまま南に進んだらサハギンたちが戦争してるんじゃないのか?」 


 「そうよ、サハギンたちと戦うつもりなの?」


 ラードの言葉にネヤも反応する。


 「……サハギンたちと戦うつもりはない。奴らも毎日戦争してる訳じゃないだろうしな」

 

 「つまり、湖を通過してその先で戦うってことね?」


 「なるほどな。確かに湖の先にはどんな魔物がいるか分からないから、行ってみる価値はあるかもな」


 俺の言葉を待たずに、二人は勝手に納得したようだ。


 俺たちが南下していくと、湖の勢力と黒亜人の群れが戦いを繰り広げていた。


 「やっぱり、戦争してるじゃない。どうするのよ?」


 ネヤが訝しげな眼差しを俺に向ける。


 面倒だな。こいつら毎日戦争してるのかよ。


 前回、黒亜人たちと戦っているときに西の方角から援軍が来たことから、湖から西の方角に黒亜人たちの拠点があると思っていたんだ。なので、西に進む予定だったんだが日を改めるか?

 

 俺が逡巡していると〈そらからヒトがくるよ〉とマークⅠが思念で俺に告げる。


 空を見上げた俺を不審に思ったのか、ラードたちも空を見上げて武器に手をかける。


 「手を出すなよ」


 そう言って俺が前に進み出ると、マリンウィッチが俺の前に飛来した。


 「よぉ、また来たぜ」


 俺のフランクな物言いに、後ろの仲間たちからざわめきが聞こえる。


 ここで黒亜人たちと戦うつもりはなかったんだが、引けなくなって思わず見栄を張ってしまったぜ。


 「また黒亜人と戦いに来たのか?」


 「まぁな。一応話を通しておかないとお前らに攻撃されたらたまらんからな」


 「……分かった。同胞たちには話を通しておくから好きに暴れてくれ」


 能面のようだったマリンウィッチの口元に笑みが浮かび、彼女は飛び去っていった。


 「おい、ロスト、どういうことなんだ? あの女は知り合いなのか?」


 ラードの言葉に、仲間たちの視線が俺に集中する。


 「前に俺たちがワンちゃんと一緒に黒亜人たちと戦ったときに彼女と知り合ったんだ。彼女は湖側の勢力で、おそらく指揮官だろう。種族はマリンウィッチで、彼女らは湖を護りたいだけらしい」


 「……はぁ? お前らが黒亜人たちと戦ったまでは分かる。だけどなんでマリンウィッチと知り合いになるんだよ?」


 「私たちが黒亜人たちを全滅させたからですわ」


 「……ぜ、全滅って、そのときも今ぐらいの数はいたのか?」


 「いましたわ」


 「マ、マジかよ……300匹ぐらいいるんだぞ……」


 これにはラードたちも動揺を隠せないようだ。


 「まぁ、湖の勢力がいるから俺たちは黒亜人たちの側面から攻撃すればいいだけだ。まずはキャニル、ルルル、ベルア、ワンちゃんで遠距離から攻撃する」


 「なるほどな。ていうか、ワンちゃんは遠距離から攻撃できるのか?」


 「ああ、ワンちゃんはブリザーの魔法が使えるんだ」


 「……マジか、ワンちゃん強くなりすぎだろ」


 ラードは複雑げな表情を浮かべている。


 今のワンちゃんに対抗できるのは、うちのエースのミコぐらいだからな。無論、マークⅡは除外しているが。


 「じゃあ、とりあえず、キャニルたちが攻撃できるところまで近づけばいいのよね?」


 ネヤの言葉に、俺は静かに頷いた。


 俺たちは黒亜人たちとの距離を詰めて、キャニルたちが配置につく。


 「シールドの魔法を持っているネヤとマロンはキャニルたちを守ってくれ。指揮はラードに任せる」


 「分かった」


 ラードの指揮でキャニルたちが黒亜人たちに攻撃を仕掛ける。


 キャニルやワンちゃんの魔法攻撃、ベルアの弓の攻撃によって黒亜人たちは次々に倒れていくが、彼女らの攻撃よりもルルル一人の攻撃が凄まじかった。


 溶解液による無数の水球弾が猛威を振るい、体が溶け落ちた黒亜人たちの口から絶叫が迸る。


 やっぱり、ルルルの『デロデロフェスティバル』はやばすぎる。しかも、『ヘロヘロリターン』で敵からSPを吸収して回復できるから、マークⅡのように無限とはいかないが、継続的に攻撃できるのもやばい。


 マークⅠ、マークⅡ、マークⅢもキャニルたちの横に並んで魔法での攻撃を開始し、マークⅢが次元の亀裂から大量の武器を地面に放出した。


 前回はレッサー・コボルトの槍だけだったが、今回はレッサー・オークやレッサー・リザードマンの武器もある。


 いずれの武器も店で売ったとしても、安値で買い叩かれる耐久度の低い武器だ。


 俺が武器を手に取って、黒亜人たちに目掛けて投擲すると、仲間たちも真似をし始める。


 「人型の蜥蜴みたいな奴はしぶといな」


 「リザードマンだ。通常種は結構強いぞ。それに空を飛んでる奴らはハーピーだ。空から魔法を撃ってくるから気をつけろ」


 「魔法か、数が結構いるから厄介だな」


 「まぁな。後は奴らの後方に人型の狼みたいなのがいるだろ」


 「あぁ、いるな」


 「あいつらが指揮官で種族はウェアウルフだ。接近してきてもお前らは戦うなよ。奴は通常種だが強さ的には上位種だからな」


 「マジか……」


 そういえばラードたちは上位種と戦ったことがなかったな。差しでは無理だとしてもパーティでなら勝機はあるが、ウェアウルフは強すぎる。一撃もらえば死人がでる可能性が高いから、もっと弱い上位種を探すしかないか。


 俺たちの攻撃で黒亜人たちの数は減っていき、そろそろハーピー種たちがこっちに攻めてくる頃だと俺は視線を空に転じた。


 だが、そこにはハーピー種たちの姿はなかった。


 おそらく、前回の戦いの経験を元に、マークⅢがマークⅡたちに指示を出し、ハーピー種たちを狙い撃ちしていた結果なんだろうな。


 それによってフェーズが一段回進んで、いや、俺たちだけのときと違ってラードたちやミルアたちがいるから二段回は進んでいる状況だ。


 要するに、急激に敵の数は減っていて、指揮官であるウェアウルフにできることは、もう一つしかないだろう。


 俺の予想通りに、追い込まれたウェアウルフが俺たちに向かって突進してくるのだった。

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