第6話 修復不能
小屋に戻った俺は、何気に水晶玉に触れて自分のスタータスを確認する。
「おっ? レベルが2になっているな」
一匹で俺のレベルが上がったってことは、あのコボルトは俺よりレベルが高かったのか?
水晶玉のステータス一覧には経験値の項目がないから分からないが、俺のレベルが2になったことで、ステータスの値が全て二倍になっているのがありがたいな。
〈マスター……なんかからだがへん……いたい……いたいよ……〉
「はぁ? 痛みは感じないって言ってただろ?」
俺はズボンのポケットに入れたままのマークⅠを取り出し、マークⅠの外観を確認する。
「傷一つないぞ?」
〈でもいたい!! い~た~いっ!! マスターなんとかしてっ!!〉
「……とりあえず、視てみるか」
俺は『生命付与者解析』でマークⅠを視てみる。
「おぉ!? お前もレベルが上がってるぞ!!」
マークⅠでレッサー・コボルトを殴ったからか? それにアースの魔法が増えているな。マークⅠが石だからアースの魔法を覚えたのか? それとも偶然か?
名前: マークⅠ 黒い石
全長: 約10cm
職業: 【無し】レベル: 2
HP: 40/200
MP: 100
SP: 100
攻撃力: 1
守備力: 10
素早さ: 1
魔法: アース
特殊能力: 無し
「ん? なんかHPが減ってるな……」
これが痛みの原因なのか?
俺はウィンドウのHPの部分に指で触れてみると、詳細が表示された。
核に致命的ダメージ発生 修復不能
「マジかよ!?」
修復不能だと? どうすりゃいいんだ?
だが、HPが40から39に減少したのを目の当たりにした俺は背筋が冷たくなる。
やべぇ……このままじゃマークⅠが死ぬかもしれん。何か代わりになる物はないのか?
俺は辺りを見渡し、鉄の槍と樽の上に置かれた木のコップに着目した。
槍だと壊れる可能性があるな……コップだと戦闘能力がさらに減る……どうすればいい?
逡巡した俺はコップを手に取って、樽の中に入っている水をすくった。
「今からお前の意識を移す」
〈わかった。はやくして〉
「おう」
問題はどれだけSPが減るかってことだが、レベルが上がってて良かったぜ。
俺は『生命付与者意識移動』を発動し、マークⅠの意識を石から抜き出した。
なんか、ふわふわした幽体のようなものが出てきたな。これがマークⅠの意識か。
俺は幽体のようなものを木のコップに移動するが、対象はコップではなく、コップの中の水だ。
石でいけたのなら水でも可能だろ。
俺はコップの中の水に意識を集中し、幽体のようなものを水の中に入れた。
「ぐぅ……結構持っていかれたな」
虚脱感に襲われた俺は、水晶玉に触れてステータスを確認する。
HPとSPが60ぐらい減ってるな……マークⅠはどうなった?
俺は『生命付与者解析』でマークⅠを視る。
「……ん?」
アースの魔法が残ってる……どういうことだ? それにレベルも2のままだ。
確か水晶玉によると、転職すればレベルが1に戻り、職業によって習得している魔法や特殊能力も消えることになっていたはずだ。
だが、自力で魔法や特殊能力に目覚めた場合は継承できるらしい。
俺はマークⅠのステータスを注視する。
そういうことか……俺はマークⅠの職業は石だと思い込んでいた。だが、それは種族名でマークⅠに職業なんてなく、体を交換しても魔法や特殊能力を継承できるってことだ。
〈なんか、いたくなくなった!! ありがとうマスター〉
「おう。体が石から水に変わったことにお前は気づいているのか?」
「えっ? ほんとだ!! からだがミズになってる!!」
「……で、動けるのか?」
〈うん、うごけるよ〉
マークⅠはコップから這い出てきて、樽の蓋の上でうにうにと動いている。
「……お、おう」
動ける速度は石と変わらないみたいだな。
「とにかく今日はもう寝るぞ。お前も意識を移して疲れているだろうからコップの中で寝ろ」
〈わかった〉
俺はベッドに寝転がると、一瞬で眠りに落ちたのだった。
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