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第59話 炸裂!!『肉球パンチ』

 

 翌日の朝、俺たちは東門でマロンたちと合流し、そこでデインたちが脱退したことをマロンたちに告げる。


 「疲れたって、日本を取り戻すために頑張るしかないじゃない……」


 マロンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。


 まぁ、マロンがそう思うのも無理はない。けど、日本人は協調性が高いからデインが言ったような同調圧力を感じたというのも分かる気がするぜ。それにあいつはここで戦うことを諦めた訳じゃない。あくまで俺たちとは合わなかったというだけの話だ。


 「ミルアたちは俺たちの隊に入ったからマロンたちがセカンドパーティになる。今後、メローズン王国に辿り着くために、サード、フォース、ファイブパーティを募ることになるから、マロンたちも良さそうな奴らがいたら声をかけてくれ」


 ラードがそう締めくくり、俺たちは一気に東の砦からさらに東に進んだ地点まで移動する。


 「どんな感じでいく?」


 デインたちが抜けて、マロンたちが加わったから少し様子をみるか。


 「とりあえず、お前に任せる」


 「分かった」


 ラードが仲間たちに指示を出す。


 まぁ、デインたちが抜けたとしても前衛、中衛は関係ないからほとんど変わらないだろう。あえて言えば、うちには盗賊職がいないからソックがいなくなったことが痛いぐらいか。


 しかし、その分、マロンとマミという上級職の前衛が加わっているので戦いやすくなってるはずだ。


 ラードたちは前方に現れた20匹を超えるウルフ種の群れと戦い始める。


 数は10匹の通常種と残りが下位種といった感じだ。


 前衛は変わらずラード、ネヤ、ミコ、ラゼだが、そこにマロンとマミが加わっている。


 前衛がそれぞれ1匹の通常種と戦っているが、残りの4匹のウルフと10匹を超えるレッサー・ウルフがこっちに向かって突っ込んでくる。


 「ウルフが四匹もこっちに来ます!!」


 ミルアが体を強張らせる。 


 「何の問題もない。お前たちは下位種と戦えばいい」


 10匹程度のウルフならラードたちで処理できるはずだが、ラードは中衛に俺たちとマロン隊の八人がいるからウルフをこっちに回したんだろうな。


 マークⅡが俺の指示なく魔法で攻撃し、巨大な鉄槍がウルフの体を貫通してウルフは息絶える。


 マジカルライズの魔法で、魔法の威力が上がっているとはいえ、一撃でウルフを倒すとはさすがマークⅡだ。


 マークⅢがファイヤの魔法を放ち、二匹目のウルフと戦い始める。マークⅡが三匹目のウルフに突進し、残ったウルフが俺に目掛けて突進してくる。


 最後の一匹は俺が倒すか。


 俺が背中の長剣に手をかけたところで、ワンちゃんが飛び出す。


 飛び掛かってくるウルフに対し、ワンちゃんが蹴りを合わせる。蹴りをまともに受けたウルフは吹っ飛び、すぐにワンちゃんはウルフとの距離を詰めて、パンチの連打でウルフを倒した。


 「嘘っ!? ワンちゃんがすごく強くなってる……」


 ミルアは驚きを隠せない様子だ。


 「ワンちゃんは上級職だからな」


 「えっ!?」


 ミルアは絶句している。


 そこに後続のレッサー・ウルフの群れがなだれ込んできて、マロン隊の隊員たちが迎え討つ。


 マロンの仲間たちの職業は全員が【戦士】らしいが、こんなに偏るということは【戦士】の数は多いんだろうな。


 レッサー・ウルフたちとの戦いにミルアたちも加わり、彼女らは何の問題もなくレッサー・ウルフの群れを倒していく。


 俺が周辺を見渡していると、次の魔物の群れが迫っていた。


 「……タートスか」


 タートスは硬いからラードたちでも手こずるだろうな……ワンちゃんを前衛に出してみるか。


 「マークⅡ、マークⅢ、中衛は任せたぞ」


 〈分かりました〉


 「分かりましたの」


 俺がラードたちに向かって歩き出すと、ワンちゃんも当然のようについてくる。


 〈まえにいくの!?〉


 俺の近くを飛んでいたダークの背に乗るマークⅠが慌てて俺の肩にのり、ラードたちはすでにウルフの群れを倒して次の戦いに備えている。


 「……お前だけがこっちに来るなんて珍しいな」


 中衛を一瞥したラードが意外そうな顔をする。


 俺の隣にワンちゃんもいるが、ラード的にワンちゃんは数に入っていないらしい。


 くくっ、ワンちゃんの強さを知れば驚くだろうな。


 少しの間をおいて、10匹ほどのタートス種の群れが俺たちに目掛けて突進してくる。


 タートスは四匹か……


 「一匹タートスを回してくれ」


 「分かった。残りの三匹はミコ、ラゼ、マロンで対処、下位種はスルー」


 ラードの言葉に頷いたミコたちがタートス種の群れに突撃して戦闘になり、ミコたちをすり抜けたタートスとレッサー・タートスたちが俺たちに向かって突っ込んでくるが、ワンちゃんが迎撃に出る。


 「なっ!? なに突っ立ってんだ!? ワンちゃんが飛び出したぞ!!」


 取り乱したラードが声を荒げるが、俺は動く気などさらさらない。


 「お、おいっ!! 」


 ラードが助けに動こうとするが、ワンちゃんのパンチを受けたタートスが弾け飛んで地面を転がり続ける。


 「――っ!? ど、どうなってる!?」


 ラードの顔は驚愕に満ちている。ネヤとマミは唖然としている。


 くくっ、いきなり『肉球パンチ』が炸裂したようだな。ラードたちも目の前の光景が信じられないことだろう。


 一撃で硬いタートスが沈んだんだからな。


 「どういうことなんだ!?」


 「鍛えた結果、今のワンちゃんは上級職なんだ」


 「はぁ!? 鍛えたって言っても二日しか経ってないだろ!?」


 「まぁ、結果的にワンちゃんの資質が高かったということだ」


 プニに『貧弱』を奪ってもらわなければ【ワンワン】に転職できなかった可能性が高い。だからワンちゃんが強くなれたのはプニのおかげだが、それは言えない約束だからな。


 「……資質か」


 ラードは複雑そうな表情を浮かべている。


 「じゃあ、猫ちゃんも強くなれるんじゃない?」


 ネヤが話に割り込んでくる。


 「可能性はあるが、猫ちゃんはレシアから離れないと思うぞ」


 「……確かに、それはそうね」


 振り返って猫ちゃんを見つめるネヤは軽い溜息をした。


 まぁ、これはあくまで建前の話だ。マークⅢに猫ちゃんを視させたら『貧弱』があったらしいからな。だからプニに『貧弱』を奪ってもらってからでないと、猫ちゃんを育てることはできないが、さすがにプニに頼りすぎるのはな……


 だから、猫ちゃんの『貧弱』をプニに奪ってもらうには、こちらも魔法か特殊能力を渡す必要がある。それもプニが持っていないようなレアな魔法か特殊能力をだ。そうなると俺かルルル、あとはワンちゃんの特殊能力を渡すことになるが、さすがにそれは無理だ。


 なので、使いどころのない珍しい魔法か特殊能力に誰かが目覚めるまでは、猫ちゃんを鍛えるのは保留するしかない。


 『貧弱』がついたままでレベルを上げたら、ステータスの値が低くなり、魔法や特殊能力にも目覚めないからだ。


 〈つぎはヘビがくるよ〉


 「スネーク種ならお前たちも戦っていいぞ。だが、通常種を狙え」


 〈やったぁ!!〉


 マークⅠが嬉しそうな声を上げると、マークⅠたちはまだ遠いスネーク種の群れに向かって飛んでいく。


 くくっ、相手に遠距離攻撃手段がない場合、飛行しているマークⅠたちは空から一方的に攻撃できるからな。

 

 ミコたちがタートスの首を持って帰還し、ワンちゃんがタートスの死体を引きずって戻ってくるとワンちゃんは解体を始める。


 マークⅠたちは空からスネーク種の群れに攻撃を仕掛けて、五匹いるスネークに平均的にダメージを与えながらこっちに導いている。


 ていうか、ダークが空から撃ってる黒い竜巻みたいな攻撃手段は何なんだ? 大きさは一メートルほどだが、かなり長い時間消えないでスネークを切り裂き続けているからダメージ総量はかなり多いんじゃないか?


 ダークはマークⅠのペットだから全く気にかけていなかった。あとでマークⅢに聞いてみるか。


 スネーク種の群れが俺たちに近づいたところで、マークⅠたちが五匹のスネークに止めを刺した。


 マークⅠたちは残った下位種の群れを中衛まで先導すると、倒したスネークたちの死体を回収しに戻る。


 「……マークⅠちゃんたちって意外に強いわよね」


 ネヤは驚きを隠せないようだ。


 「だな。俺も驚いたぜ。それにマークⅠたちが魔物を早く倒し過ぎたから珍しく手待ちだしな」


 俺たちがしばらく待っていると、マークⅠが魔物の群れを捉えて俺に報告する。


 〈つぎはアリがくるよ〉


 「次はアント種らしいぞ」


 「アント種か、ワンちゃんはどうするんだ?」


 「当然、一匹回してくれ」


 「分かった」


 「ちょ、ちょっと何言ってるのよ!?」


 訳が分からないといった感じのミコが声を荒げる。


 「ワンちゃんはロストたちが鍛えて今は上級職だそうだ。さっきのタートスもお前らより倒すの早かったんだぜ。ビックリだろ?」


 「……えっ?」


 ミコの目が揺らぎ、ラゼとマロンは石像のように、微動だにしない。


 こうして、ワンちゃんが前衛デビューを飾り、俺たちは日が暮れるまで戦い続けて戦士の村に帰還したのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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明日もたぶん10時に投稿する予定です。


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